※用語の出典は,『公認心理師基礎用語集 よくわかる国試対策キーワード117』(2018年8月発売)となります。最新版はこちら(2022年5月発売)。

①職責と多職種連携
②心理学
③実際の心理支援
④心と体
⑤制度と法律

1:公認心理師の役割

公認心理師法の第2条には,公認心理師の定義が示され,「『公認心理師』とは,第28条の登録を受け,公認心理師の名称を用いて,保健医療,福祉,教育その他の分野において,心理学に関する専門的知識及び技術を...

2:法的義務・倫理

公認心理師法第40条~43条には,公認心理師としての義務に関する主要な内容が述べられている。 第40条には「信用失墜行為の禁止」として,「公認心理師は,公認心理師の信用を傷つけるような行為をし...

3:要支援者の安全確保

心理支援は,要支援者が抱えている問題に触れるために,より不安定にさせる可能性もある。支援者はこのことをよく理解した上で安全確保を意識することが求められる。 安全の確保が実践されるためには,公認...

4:情報の適切な扱い

公認心理師は公認心理師法(第41条)において,秘密保持義務が規定されており,正当な理由がなく,その業務に関して知り得たクライエントの秘密を漏らしてはいけない決まりとなっている。さらに,公認心理師でな...

5:公認心理師の業務

公認心理師法第2条では,公認心理師の4つの役割が明示されている(→1)。これら4つの役割について,公認心理師が実施する具体的業務を挙げていく。 「1.要支援者の心理状態を観察し,その結果を分析...

6:公認心理師の資質向上

公認心理師のみならず,専門職の資格取得はミニマム・スタンダード(最低基準)であり,資格を取得した後も,自己研鑽や相互研鑽を行い,専門家として資質向上の責務が課せられている。これは公認心理師も例外では...

7:多職種連携・地域連携の意義

多職種連携 公認心理師には,国民一人ひとりの心の健康増進に寄与するために,心理アセスメントや心理面接などの専門性を発揮しながら,保健医療・教育・福祉・介護・産業などの領域で勤務する多職種との連...

8:心理学・臨床心理学の歴史

近代心理学は,生物学,医学,精神物理学などの影響を受け,19世紀後半頃に成立した。特にヴントWunt, W.(1832-1920)によって1879年ライプチッヒLeipzig大学に世界最初の心理学実...

9:心理学的アプローチ

精神力動的アプローチ 19世紀末にフロイトFreud, S.によって創始された精神分析を起源とし,その流れをくんだアプローチ法が精神力動的アプローチである(→62)。精神分析は4つの時期に大別...

10:生物心理社会モデル

クライエントへの適切な支援や介入を考える際には,多元的な視点を持って情報収集を行い,クライエントの特性や抱えている問題の全体像を把握し,総合的に理解する必要がある。その理解のための枠組みの一つが,1...

11:心の仕組みと働き

科学としての心理学が発展していく中で,個人差を科学的な方法で検証する個人差研究が誕生した。ビネーBinet, A.は精神発達の遅れのある子どもの判定を目的に知能検査を作成し,子どもの知的発達を測定す...

12:研究倫理

ヘルシンキ宣言は,第二次世界大戦やアメリカで行われた人体実験の反省より生じたニュルンベルク綱領を受けて,1964年世界医師会で採択された「ヒトを対象とする医学研究の倫理的原則」であり,周到な計画,自...

13:研究手法

心理学における実証的研究法はその対象と目的によって,量的研究と質的研究とに分けることができる。量的研究とは,尺度得点やある行動の出現回数といった数量的なデータを扱い,分析や結果の記述にあたっても数値...

14:統計手法

量的研究においては,検証したい作業仮説にそった研究計画を立て,研究対象とする集団からランダムに標本を抽出し,質問紙に対する回答などのデータを収集する。データを収集する前に,作業仮説をどのような統計的...

15:統計基礎知識

心理学の研究では,ある特徴をもった個体に対し,何らかのルールに基づいて,数値を振り,データ化することがある。そのようなルールを「尺度」とよぶ。尺度は表す内容に応じて「尺度水準」に分類される。尺度水準...

16:実験計画の立案

実験とは,実験者が状況や条件に何らかの人為的な操作を加え,その結果,検討したい事象に対してどのような影響があったのかを明らかにする研究手法である。操作する要因を独立変数,それによって影響を受けると想...

17:実験データの収集とデータ処理

心理学に関する実験では,検証したい仮説に応じて,実験室における実験のみならず,調査,観察,検査,面接等の実験手続きを用いることができる。調査を用いた実験であれば実験室実験ではPCや実験者によって提示...

18:実験結果の解釈と報告書の作成

心理学における学術論文等の報告書は,問題,方法,結果,考察の章に分けて作成するのが基本である。問題の章では,これまでの研究の流れと,その中から導かれる問題点,およびその研究において明らかにすること,...

19:感覚

あらゆる生活体にとって重要な外界および生体内部の情報を受容する役割を担っているのが感覚である。感覚は受容する刺激(情報)の種類によって,「視覚」「聴覚」「嗅覚」「味覚」「皮膚感覚(触覚を含む)」のい...

20:知覚

知覚とは,生活体が感覚受容器を通して外界や自己の内部状態を捉える働きおよびその過程をさす。感覚も同様の機能を意味するが,感覚は単純な刺激の受容であるのに対し,知覚はより高次の情報処理過程であると定義...

21:記憶

記憶のプロセスは,情報を取り入れる記銘,情報を蓄えておく保持,必要に応じて情報を取り出す想起の3段階で捉えることができる。なお,より情報処理的な用語に置き換えると,各々,符号化,貯蔵,検索となる。記...

22:思考

推論は演繹的推論と帰納的推論に分けて捉えられる。前者は一般的知識から個々の事例を導く推論様式,後者は個々の事例をもとに一般的な知識を導く推論様式である。演繹的推論には2つの前提から1つの結論を導く定...

23:条件づけ

刻印づけ(刷り込み;imprinting)は,初期学習の1つである。初期学習とは,出生直後や出生間もない時期の経験が,その後の行動になんらかの影響を及ぼすことである。ローレンツLorenz, K.は...

24:学習

自身にとって有害な嫌悪刺激が提示されている状況から逃れる反応を獲得することを逃避学習,嫌悪刺激の出現を予告する刺激のもとで,嫌悪刺激の出現を妨げる反応を獲得することを回避学習という。例えば,2つの区...

25:言語理論

言語理論とは,言語の構造などを理解するための仮説や方法論である。言語の構造は,形式(音韻,形態,統語),内容(意味),使用(語用)からなる。これらの諸側面にわたって言語学の分野が設けられている。言語...

26:言語発達

言語発達は生物学的・生得的な要因と環境的・経験的要因およびこれらの相互作用によっていると考えられる。言語獲得にまつわる理論には,学習説,生得説,社会・相互作用説,認知説などがある。チョムスキーCho...

27:言語障害

主な言語障害は,1)聴こえの障害:聴覚障害,2)言語の障害:失語症,言語発達障害,3)話し言葉の障害:構音障害,吃音,音声障害,の大きく3つに分類される(なお2)に高次脳機能障害,3)に嚥下障害を含...

28:感情喚起

感情喚起に関しては,さまざまな感情の理論が仮定され,それらを支持する脳神経学的基盤研究も盛んに行われており,扁桃体,視床下部,島皮質,前頭前野腹内側部などを中心にさまざまな感情の神経生理学的機序の仮...

29:感情理論

19世紀後半,フロイトFreud, S.は精神力動論(→62)を築き上げ,感情間の葛藤とその結果としての表現型(症状)を描き出した。精神力動理論では,人は願望があっても,その表現には不安があって,そ...

30:感情が行動に及ぼす影響

感情の発達に関する研究に,表情研究がある。新生児を対象とした研究では,同じ刺激に対して共通した表情が見られることが指摘されている(Steiner, 1979)。対して,高齢者を対象にした表情研究(中...

31:人格の概念・形成過程

パーソナリティ(人格,性格と訳される)とは,人間の個性の中核をなすものであり,それぞれの個人を特徴づけている,時間的・空間的一貫性のある行動様式である。時間的一貫性とは,多少の波はあっても時間の経過...

32:人格の類型・特性

人の人格とは千差万別であり,個人差も多様である。この人格の特徴を理解,記述するための方法は,類型論と特性論に大別される。類型論とは,個人の人格を全体的特徴によって,単一の類型に分類する方法であるが,...

33:脳神経系の構造と神経伝達物

神経細胞の構造 脳を構成する中枢神経系の最小構成単位が,神経細胞(ニューロン)であり,脳全体の細胞数の10%を占め,1,000億個以上が存在すると考えられており,細胞体,樹状突起,軸索(神経繊...

34:脳の構造と機能局在

中枢神経系は,大脳,脳幹,小脳,脊髄で構成される。また,大脳は,終脳である大脳半球(前頭葉,側頭葉,頭頂葉,後頭葉),大脳基底核,大脳辺縁系,間脳で構成され,脳幹は,中脳,後脳(橋),髄脳で構成され...

35:高次脳機能の生理学的機序と脳機能の測定法

高次脳機能の生理学的機序:意識は,生理学的には覚醒状態と同義であり,脳幹網様体賦活系が重要な役割を担う。注意は,意識と関連し,脳幹網様体,視床,大脳基底核,大脳皮質が関与している。記憶は,関与するP...

36:高次脳機能障害と高次脳機能障害者への支援

学術用語としての高次脳機能障害とは,一般に大脳の器質的病因により,失語,失行,失認など比較的局在の明確な大脳の巣症状,注意障害,記憶障害などの欠落症状,判断・問題解決能力の障害,行動異常などを呈する...

37:対人関係

人が他者に対して抱く好意や嫌悪感などの感情的な評価を対人魅力という。他者に心ひかれるきっかけは,趣味や価値観の類似性,容貌や服装などの外見的なもの,頻繁に顔を合わせるなどの近接性などがあり,個人過程...

38:集団意識・集団行動

社会的影響の代表的なものに社会的促進と社会的抑制があり,これは他者の存在によってある課題のパフォーマンスが高まる/低下する現象のことである。他者の存在が生理的な覚醒水準を高め,行動レパートリーの上位...

39:人の態度・行動

社会的自己はジェームズJames, W.(1892)が分類した自我の内容の1つで,周囲の他者が自分についてもつ印象に基づき自己を捉えることである。このように人は自分についての自分なりの見方や考え方に...

40:家族・集団・文化

家族 近代日本においては,結婚という制度により社会的に認められた形で夫婦となる。この夫と妻という二者により夫婦関係が形成され,この夫婦関係を基本として新しい家族が築かれる。この意味で,夫婦関係...

41:認知の発達

発生的認識論を確立したことで名高いピアジェPiaget, J.(1970/1972)は,認知機能の発達を,感覚運動期(誕生から~2歳ごろまで),前操作期(2~6歳頃まで),具体的操作期(6歳~12歳...

42:社会性の発達

これまで社会性の発達は,さまざまな観点から検討されてきた。古くは,規範意識(自己の行動が社会的期待に合致しているかどうかについての意識)をどう獲得していくのかに焦点が当てられ,ピアジェPiaget(...

43:他者との関係

人間の心理的発達の主たる要因として,気質と環境が挙げられる。気質とは,個人が生まれもった性質のうち,特に情緒面を指すのに対し,環境とは,個人が生まれ育った物理的および心理的状況をいう。両者がどのよう...

44:自己

人が自分の能力や性格,特徴などに関して抱えているイメージを自己概念という。類似した言葉として,自己意識とは,自己の存在への注意の焦点づけであるが,自分の感情や動機,他者には観察できない内面的な自己(...

45:生涯発達の遺伝的基盤

発達は乳幼児期の要因にのみ左右されるのではなく,いずれの時点においても変化の可能性があるとする生涯発達の考え方がある。これは,胎児期から老年期,死に至るまで,獲得と喪失の両面から発達を捉えることを目...

46:ライフサイクル論

ユングJung, C.G.(1946)は,人の一生を「少年期」「成人前期」「中年期」「老人期」の4つの周期(ライフサイクル)があることを指摘した。また,エリクソンErikson, E.H.(1959...

47:非定型発達

子どもの発達には,さまざまな要因が影響している。子どもの身体的な成長に関して,成長段階の時期であるものの身長が伸びないなどの身体的な問題が発生することを成長障害という。器質性の成長障害には,ホルモン...

48:加齢

超高齢社会の日本では,平均寿命も男女共に80歳を超え,心身ともに自立し健康に生活できる期間である健康寿命を延ばすことが必要とされている。生物学的な加齢は「時間経過にともない生理的機能や働きが変化する...

49:高齢者の生活の質

高齢化率が21%を超える超高齢社会である日本では,高齢者といってもその健康状態には個人差が大きく,元気で社会生活を送る人から,日常的生活動作(ADL; activities of daily liv...

50:障害分類

世界保健機関(WHO)が,病因論的な枠組みに立って健康状態(病気[疾病],変調,傷害など)を国際的に分類したものが,ICD(International Statistical Classificat...

51:心理社会的な支援法

複数の支援法のうち,どの方法を支援に取り込むかは要支援者・環境のアセスメントの結果および支援の目的に基づいて選択しなければならない。ここでは発達障害児者に対する代表的な支援法である認知行動療法,応用...

52:心理社会的課題

障害者権利条約の批准と障害者差別解消法(2016[平成28]年)の制定をうけ,障害を理由とする社会的障壁の除去と合理的配慮が求められるようになった。個人の能力・障害とその環境を鑑みて,ノートテイクや...

53:情報の把握と手法

心理アセスメント 心理アセスメントとは,何らかの心理支援が必要とされる可能性のある対象(クライエント)に対して,必要と考えられる情報を心理学的方法によって収集し,心理学的側面から見立て,援助の...

54:関与しながらの観察

関与しながらの観察はそもそもは心理療法における心理療法家に求められる役割,活動のことである。精神医学における対人関係の重要性を主張した新フロイト派のサリヴァンSullivan, H. S. が提唱し...

55:自然観察法,実験観察法

観察法は,対象の行動,姿勢やその周辺の状況,文脈などをよく見ることによって対象の情報を集めたり,対象を理解したりする心理アセスメントの一種である。研究手法として用いられることも多い。観察法には,自然...

56:質問紙法・作業検査法・その他

質問紙法は,クライエントが質問紙の質問に回答することによってパーソナリティ(性格)や特性,状態などを把握する心理検査である。長所は,実施や結果の整理が容易なこと,集団での実施が可能なこと,解釈に検査...

57:投映法(投影法)・描画法

投映法(投影法)は,パーソナリティ検査の1つであり非構造的な刺激や教示を提示し,その刺激にクライエントが自由に反応することで測定する。長所としては,より深い意識水準(前意識・無意識)を捉えることがで...

58:知能検査

心理検査法の内,知的能力を主として把握する方法として知能検査がある。知能検査には,大きく分けて知的能力を一つの統一的な能力(一般知能)として捉えるビネー式と能力をそれぞれ異なる能力(群因子)の総体と...

59:発達検査

発達検査は,心理アセスメントの方法論の一つである心理検査法の内,発達を主として把握する方法である。発達検査は,対象が主に乳幼児があることから,観察に重きが置かれていることが特徴であり,養育者への日常...

60:実施から解釈

心理検査の結果を分析・解釈する際は,いくつかのポイントがある。 1点目は,当然のことであるが,結果を分析する際は各検査のマニュアルに定められた方法に則ることである。そのためには,各心理検査の分...

61:適切な記録・報告

心理検査の記録は,検査者の回答を可能な限り正確に記すことが大前提である。それに加えて,検査前・検査中・検査後のクライエントの表情や言動も記録しておくべきである。このクライエントの表情や言動というのは...

62:精神力動的アプローチ

精神力動論とは精神分析の流れにある理論の総称であり,精神力動とは個人の心のなかに働いているさまざまな力の様相を指す。そうした力の相克から,パーソナリティや心理的問題を含めた当人の在りようを捉え,その...

63:行動論的アプローチ

1930年代にスキナーSkinner, B. F.は,行動に先行する明らかな原因が環境側に存在しない随意的な行動については,ワトソンWatson, J. B.が提唱した刺激と反応(S-R行動主義)だ...

64:人間性アプローチ

 人間性アプローチは人間性心理学の理論に基づくアプローチ法を指す。人間性心理学(ヒューマニスティック心理学)とは主体性・創造性・自己実現といった人間性の肯定的側面を重視した心理学の潮流で,...

65:グループ・アプローチとシステム論的アプローチ...

集団療法(グループ・アプローチ)は,「自己成長をめざす,あるいは問題・悩みをもつ複数の対象者に対し,一人または複数のグループ担当者が言語的コミュニケーション,活動,人間関係,集団内相互作用などを通し...

66:アウトリーチ

アウトリーチは英語のreach out(手を伸ばす)が語源で,支援者が必要に応じて「出向いていく」支援手法のことである。 もともとは福祉サービスの分野で「接近困難な人に対して,当事者から要請が...

67:支援方法の選択・調整

現在,心理支援の技法や理論は400近くあると言われているが,実際の心理支援では,要支援者の特性や状況に応じて,最も適切な支援方法を選択し,調整していく必要がある。適切な支援方法を選択する際,治療効果...

68:支援におけるコミュニケーション

要支援者との良好な人間関係を築くことは,支援を進めて行く際に基盤となる重要な事項である。カウンセリングにおけるクライエントとカウンセラーの信頼関係はラポールと呼ばれており,話しやすいあたたかな雰囲気...

69:心理療法およびカウンセリングの限界

心理療法やカウンセリングは万能ではなく限界がある。心理療法はさまざまな病理水準の人々に行われているが,それぞれのクライエントに対して,心理療法が適しているか,どの心理療法が適しているか等については十...

70:支援の倫理

個人情報の適切な取り扱いについては,2005年に全面施行された個人情報の保護に関する法律(個人情報保護法)に規定されており,第23条では情報の第三者への提供について本人の同意なしに行うことができない...

71:心の健康とは

生活習慣病とは,食事や運動,喫煙,飲酒,ストレスなどの生活習慣が深く関与し,発症の原因となる疾患の総称である。以前は,加齢に着目した「成人病」とよばれていたが,生活習慣の改善により疾病の発症,進行の...

72:ストレス症状と心身症

ストレスが引き起こす心身の状態として,心身症やうつ症状(→99),物質依存症(→75),燃え尽き症候群などがあげられる。 心身症とは,「身体疾患の中で,その発症や経過に心理社会的因子が密接に関...

73:予防の考え方

キャプランの三次元モデル(Caplan, 1964)によると,予防は,一次予防,二次予防,三次予防に分類され,①一次予防「疾病のない健康な人々を対象に,疾病の発生を未然に防ぎ,健康状態を促進するため...

74:先端医療の心理的課題と支援

先端医療によって新たな治療法が開発される一方で,治療法が確立していない希少な疾患でなおかつ長期に療養を必要とする難病や遺伝性疾患などがあり,治療法の選択をめぐる倫理的問題などのために患者の抱える葛藤...

75:公認心理師の保健活動

地域保健活動:地域における保健活動は地域保健法により都道府県・政令指定都市・中核市・その他政令で定める市・特別区に設置されている保健所と市町村が設置している市町村保健センターが担っている。保健所・地...

76:災害時の心理支援

大規模災害等が発生することにより起こりうる主な心理的問題として,①災害前から精神疾患等の心理的問題を抱えていた被災者が,災害によって生活環境が激変したり,これまでの定期的な治療を受けることが困難にな...

77:現代社会における心理福祉的問題

2017年時点で,日本の高齢化率(高齢人口の総人口に対する割合)は27.3%であり,50年後の2060年には39.9%となると見込まれている。一方,合計特殊出生率(一人の女性が15歳から49歳までに...

78:虐待と貧困

日本の子どもの相対的貧困率は,平成28年国民生活基礎調査によると13.9%であった。これは,日本の17歳以下の子どものおよそ約7人に1人が等価可処分所得の中央値の半分以下である相対的貧困に該当するこ...

79:子育て支援

児童虐待あるいは要支援家族への対応では,地域でのきめ細かな相談支援を通じた問題の早期発見・早期対応による発生予防が重要である。身近な母子保健や子育ての相談窓口としては,地域保健法によって市町村に保健...

80:愛着の問題

愛着をもとにした養育者との結びつきは,子どもの健全な心身の発達において土台の役割を果たす。安定した愛着は日常生活のなかで育まれるものであり,食事,睡眠,排泄,衣類の着脱といった基本的生活習慣とも密接...

81:障害児(者)への支援

我が国の障害児(者)への施策は,戦後の「措置制度」から,2003年に「支援費制度(障害のある人自身が,市区町村からの福祉サービスの支給決定を受け,サービスを受ける事業所を選択し,契約をする仕組み)」...

82:福祉現場のその他の心理的課題

PTSD(心的外傷後ストレス障害;Posttraumatic Stress Disorder)は,実際にまたは危うく死ぬ,重傷を負う,性的暴力を受ける出来事への曝露ののち,①侵入症状(出来事の苦痛な...

83:虐待のアセスメントと支援

虐待のアセスメント:児童虐待が疑われる児童を発見したものは,福祉事務所または児童相談所に通告しなければならない(児童福祉法第25条)とされている。通告があった後,児童相談所は,虐待の有無・程度により...

84:認知症のアセスメントと支援

超高齢社会の進展に伴い,認知症高齢者数も増加している。認知症に対する施策の一つとして厚生労働省は地域包括ケアシステム(→7)の構築を掲げている。地域包括ケアシステムでは,2025年を目途に,重度な要...

85:教育心理学の基礎知識

ここでは授業改善に役立つ教育心理学の知見を取り上げ解説する。例えば授業の終わりに,指導法A(学習内容を丁寧に振り返らせる)・指導法B(発展的な課題に取り組ませる)のどちらを行う方が効果的かは,その対...

86:適応不全

行動に関わる問題 不登校:不登校は文部科学省において,「何らかの心理的,情緒的,身体的あるいは社会的要因・背景により,登校しないあるいはしたくともできない状況にあるために年間30日以上欠席した...

87:スクールカウンセリング

スクールカウンセラーとは,心理の専門家として児童生徒へのカウンセリング,困難・ストレスへの対処方法に資する教育プログラムの実施を行うとともに,児童生徒への対応について教職員,保護者への専門的な助言や...

88:刑事事件への支援

裁判員裁判:裁判員裁判とは,2009年に開始された裁判員制度に基づき,市民が裁判員として参加して行われる裁判のことである。地方裁判所で行われる刑事裁判のうち,殺人・身代金目的誘拐など,重大な犯罪事件...

89:少年事件・家事事件

少年非行への支援 少年非行への支援の根拠となる法律は少年法である。少年法は,「少年の健全な育成を期し,非行のある少年に対して性格の矯正及び環境の調整に関する保護処分を行うとともに,少年の刑事事...

90:非行少年・犯罪者への支援

矯正施設では,非行少年や犯罪者の再犯防止や社会復帰の手助けになることを目指して,種々の心理支援をおこなっている。例えば,動機づけ面接法(William & Stephen, 2002)という...

91:非行・犯罪に関する精神病理

反抗挑戦性障害は,怒りっぽく,権威ある人物や大人と口論になり,挑発的な行動を持続させ,執拗に仕返しを繰り返す特徴のある障害である。特に,よく知っている大人や仲間との対人関係の中で示され,自らの行動を...

92:メンタルヘルス不調の支援

現在の労働環境においては,労働者のメンタルヘルス不調による個人の健康生活の阻害,職場における生産性の低下やコストの増加,労災補償のリスクなどの問題から,これへの対策が急務となっている。 メンタ...

93:多様性をもつ労働環境における支援

今日の労働環境では,少子高齢化の中で国際化・高度化・多様化する経済情勢に対応するために,多様な人材を多様な方法で活用するダイバーシティ・マネジメントが求められている。これと連動して個人や社会において...

94:組織論

組織とは企業,大学,病院,政府,労働組合など複数の人間が何らかの目標を共有し,その達成に向けて協働するシステムであり,組織の変化や行動のメカニズムを解明する学問は組織論と呼ばれる。バーナードBarn...

95:心身機能・症候

人体の正常構造と機能:人間の身体は,約60兆個のさまざまな種類の細胞からなる多細胞生物である。そして,さまざまな機能と身体構造が,階層構造で成り立っている。生命の単位である細胞から,同一の構造と機能...

96:疾病

主要な疾病 身体疾患に罹患することは,部分的に身体機能を喪失したり,機能に障害が及ぶことであり,二次的に心理・社会的問題が起こることは多い。総合病院などにおいては,近年さまざまな疾患に心理支援...

97:依存症

物質使用障害(精神作用物質への依存症) 物質への依存症は薬物・アルコールの摂取によって引き起こされる薬物依存症やアルコール依存症が代表的である。ICD-10では,依存症について「精神作用物質を...

98:医療の進歩と心のケア

移植医療とは,重い病気や事故などによって臓器や組織の機能が障害された患者に,他者の健康な臓器や組織を移植することで身体機能を回復させる医療である。臓器提供者(ドナー)の状態により,脳死下臓器提供,心...

99:精神症状

狭義の精神疾患(精神病)では,「病感あれども病識無し」といわれ,患者は疾病状態による苦痛から他者に相談することはあるが,それが精神疾患の症状であることは認めようとしない(病識欠如)。例えば,統合失調...

100:診断法

我が国では,ドイツ精神医学の流れをくみ,精神病を内因性精神病(統合失調症,躁うつ病,非定型精神病),器質性精神病(脳器質性疾患による精神障害)と症状性精神病(脳以外の身体疾患による精神障害),中毒性...

101:治療法

精神科領域でのアセスメント 精神科では多様な精神疾患が対象となる。診断を確定する過程で,血液検査や脳波検査,神経画像検査などさまざまな検査が実施される。心理師は臨床心理学の視点を活かし,面接や...

102:薬理作用

薬物動態 経口摂取された薬物は,腸管で吸収されて血液中に入る。血液中の薬物は,血液脳関門を通過して脳内に入り,中枢神経系への薬物作用を発揮する。一方で,血液中の薬物は肝臓で代謝され,腎臓より排...

103:向精神薬の種類

中枢神経系に作用して,精神機能に影響を与える薬物を総称して,向精神薬と呼ばれている。向精神薬はさまざまな種類があり,使用に当たっては,適切な診断に基づいて行うことが必要である。以下に,大まかな分類と...

104:医療法

医療法は,医療水準の確保を図り,医療サービスを実際に提供する病院や診療所などの医療提供施設に関する定義や開設するための要件,基準などについて定められた法律で,昭和23(1948)年に施行され,平成4...

105:精神保健福祉法

現行法に至るまで,昭和40(1965)年に精神衛生法が改正され,昭和62(1987)年に精神保健法が制定された。「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(精神保健福祉法)」は,平成7(1995)年に...

106:地域保健法

地域保健法は,平成6(1994)年に保健所法から改正された。地域保健対策の推進に関する基本指針,保健所の設置その他地域保健対策の推進に関し基本となる事項が定められている。地域保健対策に関する法律によ...

107:医療保健分野のその他重要な制度・法律

日本の医療保険制度は国民皆保険制度を採用しており,万が一起こりうる病気やケガのためにすべての国民が必ず保険に加入し,保険料を支払い,それと同時に国民一人ひとりのための医療を社会全体で支える社会保険と...

108:児童にかかわる条約・基本法

1989年の第44回国連総会において「児童の権利に関する条約(子どもの権利条約)」が採択され,1990年に発効した。この条約は,児童の人権の尊重の観点から必要となる具体的な事項を規定したものである。...

109:児童虐待の防止等に関する法律

児童の虐待防止等に関する法律(児童虐待防止法)は平成12(2000)年に制定された。第2条に虐待の定義が次のように示されている。「この法律において『児童虐待』とは,保護者(親権を行う者,未成年後見人...

110:障害関係

近年の障害者に関する制度整備において重点が置かれてきたのは,障害者を排除しないインクルーシブな社会の構築という点である。“Nothing About Us, Without Us.”のスローガンを掲...

111:高齢者

高齢者に関する法律は,1963(昭和38)年に施行された老人福祉法が最も歴史がある。高齢者福祉全般に関する基本的法律であり,老人の福祉の原理を明らかにしたものである。高齢者の心身の健康や,安定した生...

112:福祉分野のその他重要な制度・法律

配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律(DV防止法)は,平成13(2001)年に制定され,その後,平成16(2004)年,平成19年(2007)年,平成25(2013)年に改正が続けら...

113::教育基本法

教育基本法は昭和22(1947)年に制定され,平成18(2006)年に改正された。この法律では,教育の目的を「教育は,人格の完成を目指し,平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心...

114::少年法

犯罪事件を起こすと刑罰が与えられる。しかし犯罪を犯した成人と未成年者を,同一の基準で刑罰を与えることには問題がある。未成年者は,精神的発達が十分ではなく,友人関係など周囲に影響を受けやすいからである...

115::司法制度

成人が犯罪を犯した場合は刑法が適用され刑罰が与えられる。刑法とは,窃盗や傷害など,どのような行為が犯罪にあたるかを規定し,それらの犯罪を犯した場合はどの程度の刑罰が与えられるかを規定した法律である。...

116::労働三法,その他

労働基準法は,昭和22(1947)年に労働条件に関する最低基準を定めた法律であり,賃金支払い,労働時間,時間外・休日労働,深夜労働,解雇,年次有給休暇,就業規則について規定している。平成22(201...

117::職場ストレスと法

労働者のメンタルヘルス対策を推進するため,平成18(2006)年に労働安全衛生法第69条1項「労働者に対する健康教育及び健康相談その他労働者の健康の保持増進を図るため必要な措置」の適切かつ有効な実施...