33:脳神経系の構造と神経伝達物

33:脳神経系の構造と神経伝達物

神経細胞の構造

脳を構成する中枢神経系の最小構成単位が,神経細胞(ニューロン)であり,脳全体の細胞数の10%を占め,1,000億個以上が存在すると考えられており,細胞体,樹状突起,軸索(神経繊維)で構成されている(図1を参照)。それ以外の90%を占める神経膠細胞(グリア細胞)には,星状膠細胞(アストログリア),稀突起膠細胞(オリゴデンドログリア),小膠細胞(ミクログリア)などがあり,神経成長因子や栄養因子などを分泌しニューロンの維持や再生に関与している。末梢神経系の軸索(神経線維)は,シュワン細胞が取り巻きシュワン鞘を形成しており,何重にも巻きついたショウを,ズイショウ(ミエリン鞘)といい,ミエリン鞘に取り巻かれている神経線維が有髄神経線維である。一方,ミエリン鞘を形成していない,シュワン鞘にだけ取り巻かれている神経線維が,無髄神経線維である。そして,細胞体の反対側から一本の軸索が延び,細胞膜興奮による活動電位(興奮の伝導)は,くびれであるランビエ絞輪を絶縁体である髄鞘(ミエリン鞘)の跳躍伝導により伝達され,枝分かれした軸索が他のニューロンとシナプス結合を構成する。興奮伝導には,両側伝導(神経繊維の一点に発生した活動電位は両方向性に伝導する),絶縁伝導(ある神経繊維が興奮しても,隣接する他の神経繊維には関わらない),不減衰伝導(神経繊維の直径が一定のときには,興奮の強さと伝導速度はどこでも一定である)の3つの原則がある。

神経伝達物質

シナプスの出力側の細胞膜(シナプス前膜)と入力側の細胞膜(シナプス後膜)の間にはシナプス間隙という空間があり,興奮は空間を化学物質によってシナプス伝達される(図1)。また,興奮が出力側の神経終末(シナプス小頭)に伝わると,神経終末が脱分極し,そこにあるシナプス小胞が移動してシナプス前膜の活性化部分に融合する。そして,シナプス小胞の中にあった神経伝達物質がシナプス間隙に放出され,シナプス後膜にある受容体に受け止められると,入力側の神経細胞に電位変化が生じ,シナプス後電位が発生する。シナプスには,大きく分けてシナプス後膜を脱分極させる興奮性シナプスと過分極させる抑制性シナプスとがある。興奮性神経伝達物質には,ドパミン,アセチルコリン,ノルアドレナリン,アドレナリン,セロトニン,グルタミン酸,アスパラギン酸などがあり,抑制性神経伝達物質には,γ-アミノ酪酸(GABA),グリシン,オピオイド類などがある。

図1 神経細胞

末梢神経系

末梢神経系は,皮膚などで感知した情報を中枢神経へ伝達する役割と中枢神経からの指令を末端へ伝える役割があり,解剖学的には,脳に出入りする12対の脳神経系(Ⅰ嗅神経,Ⅱ視神経,Ⅲ動眼神経,Ⅳ滑車神経,Ⅴ三叉神経,Ⅵ外転神経,Ⅶ顔面神経,Ⅷ内耳神経,Ⅸ舌咽神経,Ⅹ迷走神経,Ⅺ副神経,Ⅻ舌下神経)と,脊髄に出入りする31対の脊髄神経系がある。また,機能別では,体性神経(自覚でき,意思によってコントロールできる知覚神経や運動神経など)と自律神経(意思とは無関係に働くようにみえる神経であり,心臓,肺,血管などの内臓の働きを司る)がある。自律神経には,交感神経(ノルアドレナリンが作用して活動時に働く)と副交感神経(アセチルコリンが作用して,リラックス時に働く)が,二重支配(ほとんどの臓器は,この2つの神経でコントロールされている)および拮抗支配(2つの神経は,1つの臓器に対して亢進または抑制という逆の作用をもっている)によって,バランスを保ちながら健康を維持する機能がある。

なお,脳脊髄液には,脳および脊髄を外部の衝撃から保護するとともに,頭蓋内を流れる血流量の変化に対して脳の容積を一定に保たせる働きがある。

(小海宏之)

文  献
  • 貴邑冨久子・根来英雄(2016)シンプル生理学 改訂第7版.南江堂.
  • 真島英信(1989)生理学 改訂第18版.文光堂.
  • 清水勘治(1983)小解剖学書 改訂第3版.金芳堂.

※用語の出典は,『公認心理師基礎用語集 よくわかる国試対策キーワード117』(2018年8月発売)となります。最新版(2022年5月発売)は⇩をご覧ください。

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