58:知能検査

58:知能検査

心理検査法の内,知的能力を主として把握する方法として知能検査がある。知能検査には,大きく分けて知的能力を一つの統一的な能力(一般知能)として捉えるビネー式と能力をそれぞれ異なる能力(群因子)の総体として捉えるウェクスラー式がある。ビネー式知能検査は,1905年にビネーBinet, A. とシモンSimon, Th. が開発し,MA(精神年齢)を創案した。

また,シュテルンStern, W. がIQ知能指数)を考案し,ターマンTerman, L. が開発したスタンフォード・ビネー知能検査で導入された。IQはMAをCA(生活年齢)で割り100をかけることで算出できる。日本では現在,田中ビネー知能検査Ⅴがよく用いられている。田中ビネーⅤの成人級(14歳~)では,DIQ(偏差知能指数)が採用され,結晶性,流動性,記憶,論理推理の4分野が算出される。

ウェクスラー式知能検査は,1939年にウェクスラーWechsler, D. によって開発された。適用年齢により,WAIS(成人用),WISC(児童用),WPPSI(幼児用)の3種類がある。いずれの検査も複数の複数の下位検査から構成されており,DIQを採用している。DIQとは,各年齢群においていずれも平均100,標準偏差15となるように作成してあり,同年齢級の集団内における位置を示す数値である。

現在はWAIS-Ⅲ成人知能検査,WISC-Ⅳ知能検査,WPPSI-Ⅲ知能検査が使用されている。なお,WISC-Ⅳでは,知能に階層的な構造を仮定したCHC理論(Cattel-Horn-Carroll Theory)に準拠している。知能検査は,客観的に知的能力を測定できる点で有益だが,算出された数値(IQ,MAなど)のみで捉えられやすく誤った理解につながってしまう可能性があるため留意しなければならない。

(田中あかり・永田雅子)

文  献
  • Flanagan. D. P., Kaufman, A. S. (2009)Essentials of WISC-IV Assessment, 2nd Ed. John Wiley & Sons. (上野一彦(2014)エッセンシャルズWISC-Ⅳによる心理アセスメント.日本文化科学社.)

※用語の出典は,『公認心理師基礎用語集 よくわかる国試対策キーワード117』(2018年8月発売)となります。最新版(2022年5月発売)は⇩をご覧ください。

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