心理検査の記録は,検査者の回答を可能な限り正確に記すことが大前提である。それに加えて,検査前・検査中・検査後のクライエントの表情や言動も記録しておくべきである。このクライエントの表情や言動というのは,検査結果の数値などに反映されるものではないが,検査結果を解釈しクライエントを理解していく際の重要な手がかりとなる。
心理検査の結果は報告書にまとめることが多いが,その際はいくつかの注意点がある(金子,2010)。まず,短く簡潔に,わかりやすい報告書を作成することである。長い報告書は,何が重要なのかわからなくなってしまいがちである。次に,検査結果の解釈に加えて,援助方針を記す必要もある。そうでなければ,せっかく検査を行ってもクライエントの支援につながりにくい。また,読み手にあわせて記述を工夫し,読み手が専門家でない場合は専門用語を言い換えて説明する配慮があると良い。
報告書をもとに直接クライエントやその家族・関係者に報告を行う際も,伝え方に注意が必要である。まず,クライエントの抱える苦手さや困難な点のみを伝えるのではなく,得意な能力や健康な面なども同時に伝えるよう心掛けると良い。また,特に発達検査や知能検査の場合,数値に注目が向きがちなので,数値よりもクライエントの特徴を理解してもらえるような伝え方の工夫があると良い。
(福岡明日香)
文 献
- 金子一史(2010)検査法によるアセスメント.In:松本真理子・金子一史編:子どもの臨床心理アセスメント―子ども・家族・学校支援のために.金剛出版,pp.32-39.