心理検査の結果を分析・解釈する際は,いくつかのポイントがある。
1点目は,当然のことであるが,結果を分析する際は各検査のマニュアルに定められた方法に則ることである。そのためには,各心理検査の分析方法や導き出された結果の解釈方法を十分理解しておく必要があり,これは結果の解釈における大前提である。
2点目は,クライエントの主訴や生育歴,現病歴を踏まえて包括的に結果を解釈していくことである。検査によってある結果や特性が示された時,その結果に至った経緯,あるいはその結果が与える影響は個々によって違うはずである。それゆえ,同じ結果であってもそれをどのように解釈していくかは,クライエントの生育歴等とすり合わせながら考える必要がある。そうすることによって,表面的な解釈ではなく生き生きとした解釈となり,クライエントの支援につながると考えられる。
3点目は,検査時の状況やクライエントの心理状態,行動観察を踏まえて結果を解釈することである。例えば,知能検査において,不安が強く検査場面に慣れにくいがために,最初の課題で極端に得点が低くなってしまうクライエントがいる。結果だけを見るとこの課題が苦手であると判断してしまうが,検査時のクライエントの行動観察から不安の高さが読みとることができれば,結果の解釈は違ったものになる。
4点目は,心理検査は「できないこと」に焦点が置かれてしまいがちであるが,健康な側面,潜在する能力,自助資源となる能力などポジティヴな面をアセスメントしていくことも大事である。
5点目は,心理検査によってクライエントのすべてを測定できたわけではないことを踏まえて,結果の解釈をおこなうことである。それぞれの心理検査は,人の心理特性や能力における側面のみを測定している。それゆえにテストバッテリーを組む必要があるのだが,バッテリーを組んだところで,測定できる範囲には限界がある。すなわち,今回実施した検査結果はクライエントの一部分に過ぎないことは,認識しておく必要がある。
最後に,心理検査はあくまでクライエントの心理面をアセスメントしているのであって,クライエント全体をアセスメントできているわけではないことも,結果の解釈の際に注意すべき点である。生物心理社会モデル(→10)からも分かるように,人は心理的要因だけではなく,神経・生理といった生物的要因,組織・文化といった社会的要因からも多くの影響を受けている。したがって心理検査の結果を解釈し支援につなげていく際には他要因がクライエントに与える影響についても考慮することが重要である。
(福岡明日香)
文 献
- 松本真理子(2018)心理アセスメントにおける倫理的側面.In:松本真理子・森田美弥子編:心理アセスメント―心理検査のミニマム・エッセンス.ナカニシヤ出版,pp.17-19.