101:治療法

101:治療法

精神科領域でのアセスメント

精神科では多様な精神疾患が対象となる。診断を確定する過程で,血液検査や脳波検査,神経画像検査などさまざまな検査が実施される。心理師は臨床心理学の視点を活かし,面接や各種の検査を実施し,精神疾患のアセスメントを行う。心理師は面接実施中あるいは心理検査実施中の行動観察,各種の心理評定尺度や心理検査,成育歴や現病歴を聴取することによって心理アセスメントを行い,総合的に患者の状態像を見立てる。臨床場面で用いられる心理評定尺度には,ロールシャッハ法や描画テストといったパーソナリティ検査のみならず,ウェクスラー式知能検査,改訂版ウェクスラー式記憶検査(WMS-R)や時計描画検査,ウィスコンシンカード分類検査(WCST)等の神経心理学的検査認知機能検査も,高次脳機能障害や認知症性疾患の評価を目的として用いられることがある。神経心理学的検査・認知機能検査を実施する留意点として,小海(2015)は「各種の神経心理学的検査を実施する際には,各界検査が何を測定するのかをよく理解した上で,検査を受ける各個人にあった教示方法で実施することが最も大切であろう」と述べている。検査結果は精神科医や看護師など多職種が理解でき,結果を共有できることが望ましい。

精神科領域で行われる治療

精神疾患には生物学的要因,心理的要因,社会的要因が関与している。精神科では多職種が協働し,生物学的治療,心理的治療,社会的治療を統合して治療が進められることが望ましい。生物学的要因に働きかける治療法として,薬物療法,電気けいれん療法が挙げられる。電気けいれん療法では認知機能障害が生じることがあり,その際は神経心理学的検査・認知機能検査による評価を要する。心理社会的な治療には心理療法作業療法,デイケア活動を通し,対人機能の修復やリハビリテーションが行われる。精神科では,個人心理療法,集団療法,芸術療法,家族療法,心理教育,SSTなど,精神疾患や回復の程度に合わせてさまざまな形態で心理療法が行われる。また,作業療法では園芸や陶芸活動,レクリエーションや手工芸などを通し,精神障害者の社会生活機能の回復を行う。

また,一般企業などの就労を希望している患者(65歳未満)が利用できるサービスに,就労移行支援がある。サポートの下,職業訓練や就職活動が行え,就職後6カ月間の定着支援を受けることができる。職場の定着利用期間は原則2年以内である。社会生活を送る上で利用できる社会資源のひとつに,自助グループがある。大熊(2013)によれば,「精神障害,難病,依存症,その他,それぞれ共通の障害を体験した人たちが自分たちでグループを作って活動し,互いに助け合うとともに情報を交換し,その障害に対する社会の理解を深めるよう広報活動を行うとともに,当事者の社会的権利を擁護しとうとするグループ活動」を指す。代表的な組織では,アルコール使用障害ではアルコホーリクス・アノニマス(AA)や断酒会,薬物使用障害ではナルコティクス・アノニマス(NA)がある。これらの組織では,当事者同士での体験の共有や分かち合いを目的としたミーティングが行われている。

(松井一裕)

文  献
  • 小海宏之(2015)神経心理学的アセスメント・ハンドブック.金剛出版.
  • 大熊輝雄原著,第12版改訂委員会編集(2013)現代臨床精神医学 改定第12版.金原出版.

※用語の出典は,『公認心理師基礎用語集 よくわかる国試対策キーワード117』(2018年8月発売)となります。最新版(2022年5月発売)は⇩をご覧ください。

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