50:障害分類

50:障害分類

世界保健機関(WHO)が,病因論的な枠組みに立って健康状態(病気[疾病],変調,傷害など)を国際的に分類したものが,ICD(International Statistical Classification of Diseases and Related Health Problems;国際疾病分類)である。現在は1993年に刊行されたICD-10(第10版)が使用されている。健康状態に関連する生活機能と障害は,ICF(International Classification of Functioning, Disability and Health;国際生活機能分類)によって分類される。

ICFの前身となる「国際障害分類(ICIDH)」は,1980年にWHOより刊行された。ICIDHでは,障害を,①機能障害(impairment),②能力障害(disability),③社会的不利(handicap)に分類し,疾患・変調が原因となって心身の機能・形態障害が起こり,それによって能力障害が生じ,社会的不利をひきおこすという概念モデルを提示した。その内容は,障害を3つのレベルに分けて捉えるという点で画期的なものであった(上田,2002)が,一方で,障害のマイナス面がクローズアップされやすい,環境の影響が考慮されていない,などの批判があったため,2001年に改訂版としてICFが刊行された。ICFでは,生活機能(functioning)およびその障害(disability)について,①心身機能・構造(body functions & structures),②活動(activities),③参加(participation)の3つの次元でそれぞれ分類しており,それらは健康状態(疾患・変調など)や背景因子(環境因子など)とも関連し,双方向的に影響し合うと捉えている。ICFの考え方は,人々の生活機能,および社会参加を阻害する要因について,個人の状態だけではなく,その人を取り囲む社会全体との相互作用をも視野に入れ,さまざまな側面から支援方法を考える必要があるとしている点で,アセスメント・支援における重要な視点を提供しているといえる。

ICDは,さまざまな国や地域での,あらゆる病気やけが,死因に関する統計のために作成されている疾病分類であり,1900年以降,ほぼ10年ごとに改訂・細分化されている。ICDの分類は,大分類と中分類が基本で,アルファベットと数字でコード化されている。精神疾患の分類に関しては,「第Ⅴ章 精神及び行動の障害(F00-F99)」に分類される。精神疾患・精神障害の分類および診断基準としては,アメリカ精神医学会が発行している『精神疾患の診断・統計マニュアル(DSM;Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders)』が広く用いられている。疾患は,大カテゴリーとその下位カテゴリーで構成され,5ケタのコード番号以外に,ICDのコードが併記されている。最新は2013年に刊行されたDSM-5であり,発達障害に関する診断カテゴリーとして,神経発達症群(神経発達障害群)という大カテゴリーが新設された。

なお,2018年にICD-11の最終案が発表されており,2019年に決定されるという。日本の医療保険制度の疾患等の基準はICDに準じているので,2019年以降基準や疾患名等が大きく変わっていく可能性がある。

(福元理英

文  献
  • American Psychiatric Association(2013)Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, the 5th Edition: DSM-5. Washington, DC: American Psychiatric Publishing.(日本精神神経学会監修,高橋三郎・大野裕・染矢俊幸ほか訳(2014)DSM-5:精神疾患の診断・統計マニュアル.医学書院.)
  • 茂木俊彦 編集代表(2010)特別支援教育大事典.旬報社.
  • 上田敏(2002)国際障害分類初版(ICIDH)から国際生活機能分類(ICF)へ.ノーマライゼーション─障害者の福祉,22.(http://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/prdl/jsrd/norma/n251/n251_01-01.html)(2018年4月23日閲覧)
  • WHO(1992)The ICD-10 Classification of Mental and Behavioural Disorders: Clinical Descriptions and Diagnostic Guidelines. World Health Organization.(融道男・中根允文・小見山実ほか監訳(2005)ICD-10精神および行動の障害:臨床記述と診断ガイドライン(新訂版).医学書院.)
  • WHO(2018)ICD-11 for Mortality and Morbidity Statistics. https://icd.who.int/browse11/l-m/en

※用語の出典は,『公認心理師基礎用語集 よくわかる国試対策キーワード117』(2018年8月発売)となります。最新版(2022年5月発売)は⇩をご覧ください。

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