23:条件づけ

23:条件づけ

刻印づけ刷り込み;imprinting)は,初期学習の1つである。初期学習とは,出生直後や出生間もない時期の経験が,その後の行動になんらかの影響を及ぼすことである。ローレンツLorenz, K.は,カモやアヒルなどの生れたばかりのヒナが動くものに追従する経験をすることで,それに対する追従が半永久的に続くことを報告し,これを刻印づけと呼んだ。この現象は,追従を生後のある一定の期間に経験することで生じるものの,その期間を過ぎると生じなくなってしまう。こういった初期学習が生じる生後わずかな時期は,臨界期と呼ばれる。哺乳類の場合には,初期学習の生じる期間はより長期にわたるとされており,これを敏感期と呼ぶこともある。

条件づけには,古典的条件づけオペラント条件づけがある。古典条件づけの研究者として有名なのが,パブロフPavlov, I.P.である。パブロフは,イヌにエサを与える際に,同時にベルを鳴らすことを繰り返し,その結果,イヌはベルを鳴らすだけで,唾液を分泌するようになった。このように,中性刺激(ベルの音)と無条件刺激(エサ)を繰り返し提示する対提示強化を行うことで,中性刺激が条件反応(唾液の分泌)を促す条件刺激に変わることが,古典的条件づけである。人がレモンを見ただけで唾液を分泌するのも,古典的条件づけの結果である。また,対提示強化を行わずに条件刺激のみを与え続けると,条件反応が消えていく。この過程は,消去と呼ばれる。こういったメカニズムを用いて,恐怖感情を条件づける恐怖条件づけ,嫌悪感情を条件づける嫌悪条件づけなども存在する。特に,ワトソンWatson, J.B.が行った恐怖条件づけの実験は有名である。この実験では,白いネズミと大きな音を用いて対提示強化することで,白いネズミを見ただけで恐怖を感じるといった条件づけがなされた。

一方で,オペラント条件づけの代表的な研究者はスキナーSkinner, B.F.である。スキナーはスキナーボックスと呼ばれる実験装置を用いて,ハトやラットを対象に研究を行った。このボックス内にあるレバーを押すことで,エサが与えられる仕組みになっており,ハトやラットがレバーを押してエサを手に入れると,そういったレバーを押す頻度が高まっていった。つまり,特定の自発的な行動(オペラント行動)に随伴して刺激を与えると,その行動の生起頻度が変化することが確かめられたのである。こういった行動に随伴する刺激(結果)による学習過程をオペラント条件づけと呼ぶ。行動に随伴して頻度を高める刺激(例えば,お金)は,報酬と呼ばれる一方で,行動に随伴して頻度を減らす刺激(例えば,叱責)は,と呼ばれる。こういったオペラント条件づけは,動物に芸を教える際にも応用されている(山内・春木,2001)。また,このオペラント条件づけを基礎としたものに,三項随伴性がある。これは,動物の行動を「先行刺激」「行動」「結果」という3つの関係の中で捉えようとしたものである。

以上のように動物は経験のなかで学習し,行動を獲得していく。しかし,反射や本能行動などのように,動物には経験をせずとも生まれつき有している行動(生得的行動)も存在する。本能行動に関して,ティンバーゲンTinbergen, N.はイトヨという魚のオスの闘争行動について調べている。調査の結果,なわばりに侵入してきたイトヨのオスの腹部の赤さが刺激となって,闘争行動を引き起こすことが解明された。このように,特定の刺激に対して特定の行動が生起するメカニズムは,生得的触発機構と呼ばれる。

条件づけ理論は行動療法をはじめ,多くの心理療法の理論的基盤となっている。

(梅本貴豊)

文  献
  • 山内光哉・春木豊(2001)グラフィック学習心理学―行動と認知.サイエンス社.

※用語の出典は,『公認心理師基礎用語集 よくわかる国試対策キーワード117』(2018年8月発売)となります。最新版(2022年5月発売)は⇩をご覧ください。

関連用語

その他の用語