115::司法制度

115::司法制度

成人が犯罪を犯した場合は刑法が適用され刑罰が与えられる。刑法とは,窃盗や傷害など,どのような行為が犯罪にあたるかを規定し,それらの犯罪を犯した場合はどの程度の刑罰が与えられるかを規定した法律である。なお14歳以上20歳未満の未成年者(以下少年と呼ぶ)が犯罪事件を起こした場合は,少年法(→114)が適用される。

以下に少年が犯罪を起こした場合を例にとって司法制度を説明する。少年が犯罪を起こした場合は,警察に検挙され,その後に検察庁を経て家庭裁判所に事件が送致される(なお成人が犯罪を起こした場合は,地方裁判所に事件が送致される)。家庭裁判所は,単に刑罰を与えるのではなく,少年の健全な育成の観点から,非行の事実,少年の資質や家庭環境,友人関係などを調査し,「この少年の抱えている問題点は何か,再非行の危険性はどの程度あるか,今後どのような保護が必要か」を判断して処分を決定する。そのため家庭裁判所には心理学や教育学,社会学の専門知識を持った家庭裁判所調査官が配置されている。さらに必要に応じて少年を少年鑑別所に収容して心理検査などの心身鑑別を行うこともできる。

家庭裁判所の決定する処分以下のとおりである。事件が軽微である場合や初めての非行の場合には,審判不開始や不処分の決定が出され,裁判官に注意される等の保護的措置が行われて,事件の手続きは終了する。重大事件を起こした場合や非行性が進んでいる場合は,少年院に送られるが,刑罰を与えることよりも教育的な処遇が必要だと考えられる場合には,児童自立支援施設に送られる。少年院などの施設に送るほどの重大事件を起こしていない場合は,家庭に戻されて保護者の監護にゆだねられることになるが,ただし専門家による指導が必要であるため,保護観察所による保護観察が行われることになる(保護観察制度)。

図 少年事件における主な手続きの流れ

なお平成21(2009)年から裁判員裁判が実施されている。裁判員制度とは,抽選で選ばれた一般市民が裁判員として刑事裁判に参加し,被告人が有罪か無罪か,あるいはどのくらいの刑罰が相当かについて,裁判官と一緒に決める制度である。この制度が導入された理由は,判決に一般市民の意見や感覚を反映させるためや,一般市民に司法への理解を深めてもらうためである。

また精神障害のために善悪の区別のつかない者(心神喪失または心身耗弱の状態)が犯罪事件を起こすと,刑事責任を問えない場合があるため,刑法とは別に医療観察法という法律がある。この法律は,これらの者に対して適切な医療を提供し,犯罪を起こさず社会復帰をすることを促進するために定められたものである。

(笹竹英穂)

文  献
  • 村尾泰弘・廣井亮一編(2004)よくわかる司法福祉(やわらかアカデミズム・わかるシリーズ).ミネルヴァ書房.

※用語の出典は,『公認心理師基礎用語集 よくわかる国試対策キーワード117』(2018年8月発売)となります。最新版(2022年5月発売)は⇩をご覧ください。

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