55:自然観察法,実験観察法

55:自然観察法,実験観察法

観察法は,対象の行動,姿勢やその周辺の状況,文脈などをよく見ることによって対象の情報を集めたり,対象を理解したりする心理アセスメントの一種である。研究手法として用いられることも多い。観察法には,自然状況下で人為的な操作をしない中で行動を観察する自然観察法と観察者があらかじめ状況や環境を設定しその中での対象を観察する実験観察法がある。自然観察法には,目的を持たず生活の中で偶然生じた行動を観察する日常的観察法と,一定の目標や理論に従って焦点を絞り観察する組織的観察法に分類できる。観察方法としては一定時間ごとに生じる行動を観察する時間見本法,目的となる行動が詳記しやすい場面を選んで観察する場面見本法,ある行動に焦点を当てその行動のプロセスや条件を観察する事象見本法があり,これらは現象を選択する方法である。一方,特に現象を絞り込まず対象の行動の流れをそのまま観察する日誌法もある。記録法としては,行動や状況などを直接的に描写し詳細に記録する行動描写法,行動特質を一定の基準に従って評価する評定尺度法などがある。

観察対象者の選定には,一般化を考慮して偏りのないようにする必要がある。また,観察法は主観的判断が伴いやすく,観察者バイアスの影響を受けることが多い。ある思いこみを持ちながら評定や符号化を行うと,その思いこみに沿うように結論づけられやすい(倫理的誤り)。他にも,中心化効果,光背効果,寛大効果などが存在する。観察者は一般的にどのような誤りを起こしやすいか認識して,コーエンのカッパ係数など指標を用いて信頼性を測定することが必要である。

(田中あかり)

文  献
  • 下山晴彦編(2000)臨床心理学研究の技法シリーズ・心理学の技法.福村出版.
  • 高野陽太郎・岡隆 編(2004)心理学研究法─心を見つめる科学のまなざし.有斐閣アルマ.

※用語の出典は,『公認心理師基礎用語集 よくわかる国試対策キーワード117』(2018年8月発売)となります。最新版(2022年5月発売)は⇩をご覧ください。

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