48:加齢

48:加齢

超高齢社会の日本では,平均寿命も男女共に80歳を超え,心身ともに自立し健康に生活できる期間である健康寿命を延ばすことが必要とされている。生物学的な加齢は「時間経過にともない生理的機能や働きが変化すること」と定義され,正常加齢と病的加齢に分けられる(権藤,2008)。このような加齢のメカニズムに伴う心身機能の変化として,各種感覚器官の能力や認知的機能などが低下する。最近では,「加齢に伴うさまざまな機能変化や予備能力低下によって健康障害に対する脆弱性が増加した状態」をフレイルといい,適切に介入することで。生活機能の維持・向上をはかることができると考えられている(荒井,2014)。

超高齢社会では,老後に社会とどのように関わり生活していくかという視点も重要である。活動理論ではこれまでの活動持続をすることが望ましいとされ,社会的活動量が減少する社会的離脱が個人にとっても機能的であるという離脱理論との間で論争が繰り広げられた。そのような中バルテスBaltes(1987)は,特定の目標に絞り(選択),機能低下を補う手段や方法を獲得して喪失を補い(補償),それらに最適な方略を取り,適応の機会を増やす(最適化)という補償を伴う選択的最適化(Selective Optimization with Compensation; SOC)理論を唱えた。加齢のプロセスにおいて心身の機能低下を免れることはできない。SOC理論は加齢に伴う喪失に対する適応的な対処法の一つといえる。

(鈴木亮子)

文  献
  • 荒井秀典(2014)フレイルの意義.日本老年医学会雑誌,51(6); 497-501.
  • Baltes, P. B.(1987)Theoretical propositions of life-span developmental psychology: On the dynamics between growth and decline. Developmental Psychology, 23(5); 611-626.
  • 権藤恭之(2008)生物学的加齢と心理的加齢.In:権藤恭之編:高齢者心理学.朝倉書店,pp.23-40.

※用語の出典は,『公認心理師基礎用語集 よくわかる国試対策キーワード117』(2018年8月発売)となります。最新版(2022年5月発売)は⇩をご覧ください。

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