犯罪事件を起こすと刑罰が与えられる。しかし犯罪を犯した成人と未成年者を,同一の基準で刑罰を与えることには問題がある。未成年者は,精神的発達が十分ではなく,友人関係など周囲に影響を受けやすいからである。そのため未成年者の健全な育成をめざして,刑法とは異なった法律が作られた。それが少年法である(旧少年法は1922年に制定,2000年刑事処分可能年齢を14歳に引き下げた)。
ただ未成年者といっても,小学生から大学生まで含まれ年齢の幅が広く,精神的発達の程度は大きく異なる。そのため少年法は14歳以上20歳未満の者が犯罪を起こした場合に適用される(犯罪少年)。また少年の健全な育成の観点からは,犯罪を起こしていなくても,その危険がある場合には早期に適切な保護を行う必要がある。そのため少年法では,罪を犯すおそれのある者(虞犯少年)も裁判の対象とすることができる。罪を犯すおそれとは,理由もなく家出を繰り返すなど,少年法に具体的に例示されている。犯罪少年,触法少年,虞犯少年を総称して,非行少年と呼んでいる。なお14歳未満の者が犯罪を起こした場合は,基本的には児童福祉法が適用される(触法少年)。
なお少年が犯罪を起こした場合は,検察官はすべての事件を家庭裁判所に送致しなければならない(全件送致主義)。その理由は,家庭裁判所には,心理学や教育学,社会学などの専門家である家庭裁判所調査官が配置されており,少年の健全な育成の観点から適切な措置を判断することが可能であるからである。また,送致された事件で刑事処分が必要とされた場合に再び検察官に戻すことを逆送という。一方成人が犯罪を起こした場合は,犯罪の軽重や情状を考慮して検察官が裁判所に送致するか否かを判断しており,すべての事件が裁判所に送致されるわけではない。
(笹竹英穂)