4:情報の適切な扱い

4:情報の適切な扱い

公認心理師は公認心理師法(第41条)において,秘密保持義務が規定されており,正当な理由がなく,その業務に関して知り得たクライエントの秘密を漏らしてはいけない決まりとなっている。さらに,公認心理師でなくなった後についても,秘密保持義務は課せられている。公認心理師は心理業務を行う中で,クライエントに関する個人情報を多く取り扱うことになる。こうした個人情報については個人情報保護法に基づいて適正に取り扱うべきである。個人情報保護法を含む個人情報に関連する法律を個人情報保護法関連5法と呼ぶ。

その中には,行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律,独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律,情報公開・個人情報保護審査会設置法,そして行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律が含まれている。公認心理師もこうした法律に則り,情報を適切に取り扱う必要がある。

例えば,個人情報を取り扱う業者は,情報漏洩のリスクを回避し,個人データの安全管理のために適切な措置を講じなければならないとされている(個人情報保護法第20条)。紙媒体の資料については鍵のかかる場所に保管すること,パソコン等での管理はファイルにパスワードを設定するといった安全管理措置が示されている。また,メールやウェブ上でのやりとりについては,最大限の注意を要する。カウンセリングや心理検査等で,クライエントの個人情報を取り扱うことが多く存在する公認心理師は,業務に関する記録の適切な保管場所や,保管方法についても常に意識し,徹底管理しておく必要がある。

一方で,公認心理師には,多職種連携,地域連携のように要支援者に対して支援を行う関係者との連携も義務付けられており,クライエントの利益のためには,保健医療・福祉・教育などの職種の異なる専門家間の情報共有が必要となる。さらに,所属機関内でのケース・カンファレンスを行う際にも,情報共有が行なわれることになる。これは,クライエントの個人的な情報を第三者に話すこととなり,プライバシーの保護に反することになってしまう。

そのため,クライエントに関する情報を第三者に提供する場合は,提供される内容と相手についてクライエントの同意を得ること(インフォームド・コンセント)が必須である。第三者に伝える場合その前に,クライエントとどういった必要性があるのかを共有した上で,どの内容を誰にどこまで話すかといった点に関して,よく話し合うことが重要となる。ただし,裁判や司法手続きのほか,法手続きに基づく場合や,自殺や虐待など人命にかかわる非常事態などの場合にはクライエントの同意なく,情報を開示する場合もある。

公認心理師は個人の重要な情報を扱う仕事であるため,クライエントとの関係を開始する段階で秘密の取り扱いについては,同意書等で内容を共有しておくべきである。その際に,情報の取り扱いについて双方が理解し,クライエントの権利を尊重するインフォームド・コンセントを得ておくことが,トラブルを防止するためにも重要である。

(三谷真優)

文  献

※用語の出典は,『公認心理師基礎用語集 よくわかる国試対策キーワード117』(2018年8月発売)となります。最新版(2022年5月発売)は⇩をご覧ください。

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