35:高次脳機能の生理学的機序と脳機能の測定法

35:高次脳機能の生理学的機序と脳機能の測定法

高次脳機能の生理学的機序:意識は,生理学的には覚醒状態と同義であり,脳幹網様体賦活系が重要な役割を担う。注意は,意識と関連し,脳幹網様体,視床,大脳基底核,大脳皮質が関与している。記憶は,関与するPapez回路(内側辺縁系回路)とYakovlev回路(外側辺縁系回路)がある。知覚は,末梢の感覚器での情報が一次性求心性ニューロンにより脊髄に入り,脊髄後角で二次性求心性ニューロンにシナプス伝達後,前交連で交叉し,対側の視床に連絡後,頭頂葉の体性感覚野に至る。感情は,扁桃体,視床下部,島皮質,前頭前野腹内側部などが中心的な役割を担う。

脳機能の生理学的指標:自律神経系指標としては,交感神経系の亢進を,体温の上昇,脈波(心拍数・心拍量の増加),血圧の上昇,皮膚電位図(発汗),筋電図(骨格筋の緊張亢進),心電図(血管拡張)で測定する。電気生理学的指標としては,脳波(ニューロンの総和的な電気的活動を測定),事象関連電位(外的刺激を負荷した際の高次の情報処理過程を反映する電位変化を測定),脳磁図(ニューロンの電気活動に伴う微弱な磁場変化を測定)などがある。

機能的脳画像の指標:ニューロンの活動が亢進すると,酸素や糖代謝の消費量が上昇し,結果的に局所脳血流量が増加することを利用し,放射性同位元素を用いて局所脳血流量や糖代謝の変化を測定するのが,脳血流シンチ(SPECT)とポジトロン断層撮像法(PET)である。機能的磁気共鳴画像(fMRI)は,局所脳血流量の変化を磁場を用いて測定する。近赤外線分光法(光トポグラフィー:NIRS)は,大脳皮質の脳血流量の変化を測定する。

(小海宏之)

文  献
  • 小海宏之(2015)神経心理学的アセスメント・ハンドブック.金剛出版.
  • 真島英信(1989)生理学 改訂第18版.文光堂.
  • 山鳥重(1985)神経心理学入門.医学書院.

※用語の出典は,『公認心理師基礎用語集 よくわかる国試対策キーワード117』(2018年8月発売)となります。最新版(2022年5月発売)は⇩をご覧ください。

関連用語

その他の用語