72:ストレス症状と心身症

72:ストレス症状と心身症

ストレスが引き起こす心身の状態として,心身症うつ症状(→99),物質依存症(→75),燃え尽き症候群などがあげられる。

心身症とは,「身体疾患の中で,その発症や経過に心理社会的因子が密接に関与し,器質的ないし機能的障害が認められる病態をいう。ただし神経症やうつ病など,他の精神障害に伴う身体症状を除外する」もののことをいう(日本心身医学会,1991)。心身症とその周辺疾患には,呼吸器系,循環器系,消化器系,小児科領域など,幅広い領域が含まれる。心身症の治療においては心身両面へのアプローチが重要であり,身体症状への医学的治療だけでなく,生活習慣の改善や認知療法・認知行動療法等の精神療法によるストレスコントロールが並行して行われる。また,心身症との関連が指摘される心理的特性に,タイプA行動パターン(高い野心,競争心,性急さなどを示す)とアレキシサイミア(自身の感情を同定できない,言語化できないなどの特徴をもつ)があり,心身医学の領域ではこれらの概念をふまえた治療が行われている。対人援助職に特徴的なストレス症状に,燃え尽き症候群(Freudenberger, 1974)がある。燃え尽き症候群は,情緒を使い果たし消耗してしまった状態である「情緒的消耗感」,相手に対して無情で非人間的な対応をとる「脱人格化」,職務に関する有能感,達成感が低下する「個人的達成感の低下」の3つの症状を特徴とする病態であり(Maslach et al., 1982),バーンアウトともよばれる。

(石川佳奈)

文  献
  • 日本心身医学会教育研究委員会(1991)いわゆる心身症の定義.心身医学,31(7); 537-573.
  • Maslach, C. & Jackson, S. E.(1982)The Maslach Burnout Inventory. Palo Alto, CA: Consulting Psychologists Press.
  • Friedman, M. & Rosenman, R. H.(1959)Association of specific overt behavior pattern with blood and cardiovascular findings. Journal of the American Medical Association, 169; 1286-1296.

※用語の出典は,『公認心理師基礎用語集 よくわかる国試対策キーワード117』(2018年8月発売)となります。最新版(2022年5月発売)は⇩をご覧ください。

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