96:疾病

96:疾病

主要な疾病

身体疾患に罹患することは,部分的に身体機能を喪失したり,機能に障害が及ぶことであり,二次的に心理・社会的問題が起こることは多い。総合病院などにおいては,近年さまざまな疾患に心理支援が求められている。以下に主要な疾病を羅列するが,心理支援で関わる時には,その患者が,どのような疾患であるのか,その疾患の経過や症状等を最低限医学辞典等で調べて,理解してから関わりたい。

運動器系(筋・骨格系)疾患:身体を支え,運動を行う機能であり,その疾患は,骨粗しょう症,骨軟化症(くる病),変形性関節症などがある。近年,サルコペニア(加齢に伴って筋肉量が減って,筋力・身体機能が低下した状態),ロコモティブシンドローム(骨,関節,筋肉・神経の障害のために移動機能が低下した状態),フレイル(サルコペニア,ロコモティブシンドロームだけでなく,精神・心理的問題も含んだ身体機能障害を起こしやすい状態)が加齢にともない問題となっている。

呼吸器系疾患:呼吸器はエネルギーを産出するのに必要な酸素を取り入れ,二酸化炭素を排出する機能をしている。その疾患は,肺炎,肺結核,気管支喘息,慢性閉塞性肺疾患,肺がん等がある。

循環器系疾患:循環器は血液やリンパ液を細胞に送る機能をしている。その疾患は,動脈硬化,高血圧,虚血性心疾患(狭心症,心筋梗塞),不整脈,心不全,肺塞栓等がある。

消化器系疾患:消化器は食物の消化と栄養の吸収の機能をしており,その疾患は,口内炎,胃食道逆流症,胃・十二指腸潰瘍,クローン病,潰瘍性大腸炎,過敏性腸症候群,肝炎,肝硬変,脂肪肝,胆石症,胆嚢炎,膵炎等がある。

内分泌代謝系疾患:神経系ととともに生活活性物質(ホルモン)によって,生体機能を調節しており,その疾患は,甲状腺機能亢進症・低下症,原発性アルドステロン症,クッシング症候群,褐色細胞腫,副甲状腺機能亢進症,先端巨大症,尿崩症,糖尿病等がある。

神経系疾患:各器官の働きを調節する機能をしており,その疾患は,脳出血,クモ膜下出血,脳梗塞,認知症,パーキンソン病,ウェルニッケ脳症等がある。

脳血管疾患:脳血管障害,脳腫瘍,神経変性疾患・脱髄疾患,感染性疾患,頭部外傷などがある。

がん:細胞が不規則・過剰に増殖して組織の固まりを形成することがあり,それを腫瘍という。生命を脅かさない良性腫瘍と,際限なく増殖して他の臓器にも転移し,その機能を破壊してしまう悪性腫瘍があり,悪性腫瘍のことをがんと言う。悪性腫瘍には,上皮組織から生じるがん腫と,筋肉・骨・結合組織より生じる肉腫があり,それに血液の腫瘍(白血病,悪性リンパ腫,多発性骨髄腫)がある。

後天性免疫不全症候群AIDS):AIDS(Acquired Immunodeficiency Syndrome)とは,ヒト免疫不全ウィルス(HIV)が免疫細胞に感染し,免疫細胞を破壊して後天的に免疫不全を起こす疾患であり,性感染症の一つである。この疾患が発見された初期には死に至る病とされたが,近年では抗HIV薬が開発され,完治は困難であるが,投薬が継続されれば,平均余命は非感染者とそれほど変わらないとされている。

遺伝性疾患:遺伝子の異常が原因となって起きる疾患であり,染色体異常症(ダウン症候群など),単一遺伝子疾患(ミトコンドリア病など),多因子遺伝疾患(ヒルシュスプルング病など)に分けられる。心理支援も含まれる遺伝カウンセリング(→74)も重要である。

(古井由美子)

文  献
  • 荒木英爾ら(2012)改訂人体の構造と機能:解剖生理学.建帛社.
  • 伊藤正男ら(2003)医学大辞典.医学書院.

※用語の出典は,『公認心理師基礎用語集 よくわかる国試対策キーワード117』(2018年8月発売)となります。最新版(2022年5月発売)は⇩をご覧ください。

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