12:研究倫理

12:研究倫理

ヘルシンキ宣言は,第二次世界大戦やアメリカで行われた人体実験の反省より生じたニュルンベルク綱領を受けて,1964年世界医師会で採択された「ヒトを対象とする医学研究の倫理的原則」であり,周到な計画,自由意思による同意,患者の利益やプライバシーの保護などが定められている。現在でも,世界的に研究倫理の原則となっている。また臨床研究の参加者を保護するためのガイドラインとして,「ベルモントレポートの生命倫理原則」がアメリカで作られ,「人格の尊重」,「利益(無害であると同時に,予測されうる利益を最大化し,予想されうる危害を最小化すること)」,研究対象者の選択の「公平」の3つが基本原則とされている。また,研究行為への一般的な原則の適用は,インフォームド・コンセント(→5),リスク対利益の評価,および研究対象者の選択といった必要条件を考慮しておく必要があるとされた。

心理学における研究倫理は,アメリカ心理学会による倫理コード(American Psychological Association, 2002/2016改正 )が出され,「善行と不悪行」,「誠実と責任」,「統合性」,「公正」,「人の権利と尊厳に対する敬意」の5つの基本原則が示されている。

研究として行う場合,すべての研究は実施前に所属している機関の研究倫理委員会(あるいは倫理審査委員会)の承認を得るべきとされており,特に人を対象とする(個人を特定できる由来の材料およびデータに関する研究尾含む)臨床研究については厚生労働省が「臨床研究における倫理指針」を提示している。また近年,研究は発表を行う際には利益相反(COI:Conflict of Interest)の情報開示が求められるようになった。COIを明らかにすることは,研究対象者の人権・安全を守ることであり,各学会において利益相反の対象範囲や表示方法は指針が示されている。

(永田雅子)

※用語の出典は,『公認心理師基礎用語集 よくわかる国試対策キーワード117』(2018年8月発売)となります。最新版(2022年5月発売)は⇩をご覧ください。

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