25:言語理論

25:言語理論

言語理論とは,言語の構造などを理解するための仮説や方法論である。言語の構造は,形式(音韻,形態,統語),内容(意味),使用(語用)からなる。これらの諸側面にわたって言語学の分野が設けられている。言語は音を媒介として意味を伝達するが,この音を対象とするのが音韻論である(佐久間ら,2004)。単語の構造を対象とするのが形態論である。統語論は,単語や形態素がどのような規則に従って並んでいるのか,つまり文がどのような構造をもっているのかという問題を対象とする。例えば,「日本語の基本的語順は,主語 (S)-目的語 (O)-述語 (V) であるが,述語は最後におくという点を除き比較的自由である」などである。意味論は,単語・形態素,文が表す意味を対象とする。また,語用論は言語表現とそれを用いる使用者と文脈との関係を研究する。例えば,自閉スペクトラム症では語用的側面の発達が遅れ,ことばを字義通りに解釈し,ことばの裏の意味を理解することが困難であることが知られている。

言語習得についての説明は統一されていない。認知言語学では,言語とは人間が環境世界をどのように把握しているかという「認知」の仕方を映していると考える。つまり,言語は文化と個々人の環境を反映したものであり,認知機能の発達と共に人間はあらゆる周りの人間の刺激を受けることで言語を「習得」していくとする(例えば,「お花見」の花が桜であることを子どもは理解できない)。一方,社会言語学の分野では,不完全な言語であるピジン(pidgin;異言語間の意思疎通のために自然に発生した混合言語)から完全な言語体系をもったクレオール(creole;次の世代で母語言語になったもの)が発生することが知られているが,これは言語の生得性を支持する例である。

(土屋美智子)

文  献
  • 佐久間淳一・加藤重広・町田健(2004)言語学入門.研究社.

※用語の出典は,『公認心理師基礎用語集 よくわかる国試対策キーワード117』(2018年8月発売)となります。最新版(2022年5月発売)は⇩をご覧ください。

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