68:支援におけるコミュニケーション

68:支援におけるコミュニケーション

要支援者との良好な人間関係を築くことは,支援を進めて行く際に基盤となる重要な事項である。カウンセリングにおけるクライエントとカウンセラーの信頼関係はラポールと呼ばれており,話しやすいあたたかな雰囲気がそこには流れる。このような良好な関係を構築するには,要支援者の話を傾聴することが必要である。傾聴とは,相手の話に耳を傾け,表情やしぐさにも目を向けながら,伝えたいことを理解しようと意識して聴くことをいう。

さらに,要支援者の話を共感的に理解することも重要である。一般的には,共感は同感や同情と混同されやすいように思われる。話を聞いて「その気持ち,わかります」や「かわいそう」という反応は共感的理解ではない。共感的理解とは,ロジャーズRogers(1957)がセラピーにおけるセラピストの態度として重視したものの1つであり,クライエントの私的な世界をあたかもそれが自分自身の世界であるかのように感じとることである。

そして,理解したことをクライエントに伝えていくことで,クライエントの内的世界をさらに理解していくことになる。要支援者の中には,さまざまな事情によりこれまで安心できる対人関係を経験してこなかった人も多いので,傾聴や共感的理解により,少しずつ他者に話すことを試みることができるということに留意する必要がある。また,セラピーでは作業同盟(therapeutic alliance)と呼ばれる協力関係を形成することも重要である。時間や回数,ルール,治療目標などについて十分に話し合い,納得したうえで,面接契約が取り決められる。この面接契約とともに,クライエントとセラピストは協働してセラピーに取り組むのである。

(三後美紀

文  献
  • Rogers, C. R.(1957)The necessary and sufficient conditions of therapeutic personality change. Journal of Consulting Psychology, 21; 95-103.

※用語の出典は,『公認心理師基礎用語集 よくわかる国試対策キーワード117』(2018年8月発売)となります。最新版(2022年5月発売)は⇩をご覧ください。

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