79:子育て支援

79:子育て支援

児童虐待あるいは要支援家族への対応では,地域でのきめ細かな相談支援を通じた問題の早期発見・早期対応による発生予防が重要である。身近な母子保健や子育ての相談窓口としては,地域保健法によって市町村に保健センターが設置されており,保健師が中心となって乳幼児健診等の母子保健事業や子育て相談等の子育て支援事業,要保護児童への支援が行われている。さらに,より専門的な子どもと家族の支援機関として,児童福祉法によって都道府県に児童相談所の設置が義務づけられている。児童相談所では,児童福祉司や児童心理司,医師,弁護士などの専門職職員によって一時保護や社会的養護を必要とするような深刻な児童虐待ケースや非行,障害など専門的な知識や技術を要する対応を市町村と役割分担および連携を図りながら行っており,1)市町村援助機能(市町村相互間の連絡調整や情報提供など),2)相談(子どもの家庭状況や発達,行動等に専門的な調査,診断,判定を行い,援助指針を定める),3)一時保護(子どもの安全確保と調査のための家庭からの一時的な隔離),4)措置(保護者への指導や児童福祉施設への入所,里親委託)の4つの基本機能を担っている。施設措置や里親委託の際に保護者の同意が得られない場合には,児童福祉法第28条により,家庭裁判所に申し立てを行い,審判を経て委託・措置となる。

児童虐待(が疑われる場合)への対応(→78109)は,迅速かつ組織的な対応が求められる。これまでにも,児童福祉法(第25条)によって保護者に監護させることが不適当であると認める児童を発見した場合の通告義務が定められていたが,平成16(2004)年の児童虐待防止法の一部改正により,通告義務が児童虐待の疑いがある場合にも拡大された。さらに,学校の教職員や児童福祉施設職員,保健師,医療者など児童の福祉に業務上関係がある者は,児童虐待を発見しやすい立場にあることを自覚して早期発見の努力義務を負うことや通告の際に守秘義務が通告の妨げにならないことも明記された。児童虐待が疑われる場合には,児童や保護者との面接だけでなく,児童の通園・通学先など関係機関からの情報収集および情報共有を行い,過不足のない介入および援助方針を立てることが必要である。子どもの安全確保が優先されるが,児童虐待が起こる背景には家族が抱えている多様な困難があることに留意して,その要因に対して幅広い機関連携による保護者への援助も必要である。

保護者と過ごすことが不適切であると判断された児童は,乳児院や児童養護施設,児童自立支援施設,母子生活支援施設などの児童福祉施設での養育あるいは里親養育,特別養子縁組などの社会的養護(→108)を受ける。里親制度とは,さまざまな事情で家庭で育つことのできない子どもたちを一定期間,あるいは子どもが社会的に自立できるようになるまで自分の家庭に受け入れて育てる制度であり,児童相談所が子どもの養育を里親へ委託する。里親には,家庭の生活を子どもたちに伝える養育里親や虐待を受けていた子どもなどきめ細やかな配慮や専門的知識が必要な専門里親,養育者の住居で複数の子どもを受け入れて一定期間養育を行うファミリーホーム(小規模住居型児童養育事業)などがある。里親委託は,里親が一時的に子どもを養育する制度であるため,親権は実親にあり,里親と子どもとの戸籍上のつながりが発生しない。一方で,特別養子縁組は,児童福祉のための養子縁組の制度で,さまざまな事情で育てられない子どもが家庭で養育を受けられるようにすることを目的に設けられた制度である。特別養子縁組では,家庭裁判所の審判を通して養子は戸籍上養親の子どもとなり,実親らとの親族関係が終了する。

(脇田菜摘)

文  献

※用語の出典は,『公認心理師基礎用語集 よくわかる国試対策キーワード117』(2018年8月発売)となります。最新版(2022年5月発売)は⇩をご覧ください。

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