26:言語発達

26:言語発達

言語発達は生物学的・生得的な要因と環境的・経験的要因およびこれらの相互作用によっていると考えられる。言語獲得にまつわる理論には,学習説,生得説,社会・相互作用説,認知説などがある。チョムスキーChomsky, N.によれば,子どもが不十分な言語資料からでも,短期間に母語の複雑な文法獲得が可能なのは,人間が生得的に言語獲得装置(LAD)という特別な装置を備えているからである。すなわち,彼の提唱する生成文法ではあらゆる言語に共通する文法である普遍文法(UG)を仮定するが,子どもは生まれながらにしてこの能力をもっていると主張した。それに対してブルーナーBruner, J.S.は,子どもがLADを持っているとしても,実際にことばを使えるようになるには,大人の言語獲得支援システム(LASS)によって形成される相互活動的な事象として他者とのコミュニケーションが必要であると主張した。

子どもの言語獲得過程をみていくと,生後2~3カ月頃にはクーイングと呼ばれる独特の音声や笑い声を表出し,6カ月前後の喃語期を経て,1歳頃に初語が出現し一語期を迎える。2歳前後から,2語を続けて発することができる二語期を迎える。幼児では,いったん3語発話が出現すると4語,5語あるいはそれ以上の発話をするようになり,これを多語期と呼ぶ。また,1歳6カ月を過ぎ,産出語彙が50~100語を超えた頃,爆発的に語彙が増加する。語彙獲得については,子どもは事物全体制約,カテゴリー制約,相互排他性の3つの原理を使用して,効率よく語の意味を推測すると考えるマークマンMarkman, E. M.の認知的制約論共同注意の成立と他者意図の理解を重視するトマセロTomasello, M.らの社会語用論的な考え方の2つの説がある。

(土屋美智子)

文  献
  • 大森孝一・永井知代子・深浦順一ほか(2018)言語聴覚士テキスト.医歯薬出版.

※用語の出典は,『公認心理師基礎用語集 よくわかる国試対策キーワード117』(2018年8月発売)となります。最新版(2022年5月発売)は⇩をご覧ください。

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