37:対人関係

37:対人関係

人が他者に対して抱く好意や嫌悪感などの感情的な評価を対人魅力という。他者に心ひかれるきっかけは,趣味や価値観の類似性,容貌や服装などの外見的なもの,頻繁に顔を合わせるなどの近接性などがあり,個人過程において人と人との関係性や結びつきを理解する際の重要な要素となる。また,人が日常生活の中でとるさまざまな行動について,特定の他者に対してとるものを対人行動という。その例として以下に3つ挙げる。1つめは攻撃行動で,他者に対して危害を加えようと意図的に生じるものであり,身体的な苦痛である暴力だけでなく,無視したり,非難したりするなどの精神的苦痛を与えるものも含める。2つめは外的な報酬や返礼を目的とせず自発的に行われるもので,他者に利益をもたらす援助行動である(松井ら,1998)。これは困難に直面している他者に利益をもたらすために起きるが,集団過程において傍観者効果が生じ,行動が起きにくくなることもある。3つめは協同で,人と人とがお互いにできることとできないことを認識し,補い合っていこうとする行動で,相互依存的な関係性に基づいているものといえる。

また,人と人とが情報やメッセージを伝達したりそれを解読したりするプロセスをコミュニケーションという。基本的には情報を送信する「送り手」,送り手が送りたい内容である「メッセージ」,メッセージを受け取る「受け手」という3つの要素から成り立っている。コミュニケーションがより円滑になされるために,対人場面において必要とされるものが社会的スキルである。よりよい人間関係を築き上げるために,言語や非言語的な行動を使用して,効果的な反応をすることのできる能力のことをさす。

(大嶽さと子)

文  献
  • 松井豊・浦光博編(1998)人を支える心の科学.誠信書房.

※用語の出典は,『公認心理師基礎用語集 よくわかる国試対策キーワード117』(2018年8月発売)となります。最新版(2022年5月発売)は⇩をご覧ください。

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