116::労働三法,その他

116::労働三法,その他

労働基準法は,昭和22(1947)年に労働条件に関する最低基準を定めた法律であり,賃金支払い,労働時間,時間外・休日労働,深夜労働,解雇,年次有給休暇,就業規則について規定している。平成22(2010)年には,長時間労働の抑制を目的として労働基準法の一部が改正され,1カ月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が5割に引き上げられた。この労働基準法に,労働組合法,労働関係調整法を加えた労働三法において,労働者の権利が具体的に示されている。

昭和47(1972)年には,労働基準法から派生した労働安全衛生法が制定された。労働安全衛生法は,①危険防止基準の確立,②責任体制の明確化,③自主的活動の促進,などにより職種における労働者の安全と健康を確保するとともに,快適な職場環境の形成を促進することを目的としている。その後,重大災害の発生,健康障害の増加など,労働者の生命や生活に関わる問題の深刻化が指摘され,平成17(2005)年に,危険性・有害性の低減に向けた事業者の措置の充実,過重労働・メンタルヘルス対策の充実を図るよう一部が改正された。

労働契約法は,就業形態の多様化によって労働条件が個別に決定されるようになったことにより増加した個別労働紛争を未然に防ぎ,労働者を保護することを目的に平成20(2008)年に制定された。個別の労働者および使用者の労働関係が良好なものとなるよう,労働契約についての基本的なルールを規定している。この中で,使用者が労働者に対して負うべき健康管理上の義務を「安全配慮義務(第5条)」という。その後,パート労働や派遣労働などの,いわゆる正社員以外の労働形態に多くみられる有期労働契約に関連する問題に対処するため,平成24(2012)年に法律の一部が改正された。この改正では,労働者が安心して働き続けることができる社会の実現を目的として,①無期労働契約への転換(第18条),②「雇止め法理」の法制化(第19条),③不合理な労働条件の禁止(第20条)の3つのルールが規定されている。

障害者雇用促進法は,昭和35(1960)年に障害者の職業の安定を図ることを目的とし制定され,改正を重ねている。本法は,事業主に対して一定割合(法定雇用率)以上の障害者の雇用義務(障害者雇用率制度)や,障害者本人に対しては職業リハビリテーションの措置等を図ることを規定している。法定雇用率を満たしていない事業主からは納付金が徴収される一方,障害者を多く雇用している事業主に対しては各種助成金が支給される(障害者雇用納付金制度)。平成28(2016)年の改正で 障害者差別禁止規定や合理的配慮,平成30(2018)年の改正で,法定雇用率算定に精神障害者を加えることになった。

男女雇用機会均等法は,雇用において男女の均等な機会および待遇の確保を図ることを目的とし,昭和47(1972)年に制定された。本法では,募集・採用,配置・昇進等の雇用管理の各ステージにおける性別を理由とする差別の禁止や婚姻,妊娠・出産等を理由とする不利益取り扱いの禁止等が定められている。また,平成29(2017)年の法改正により,上司・同僚からの職場における妊娠・出産等に関するハラスメント防止対策の措置が義務づけられている。

労働者派遣法は,昭和60(1985)年,労働者派遣事業の適正な運営および派遣労働者の保護を目的とし制定された。その後,平成27(2015)年の改正において,労働者派遣事業の許可制への一本化,期間制限の見直し,キャリアアップ措置,均衡待遇の促進,労働契約申し込みみなし制度が新たに規定された。

(石川佳奈)

文  献

※用語の出典は,『公認心理師基礎用語集 よくわかる国試対策キーワード117』(2018年8月発売)となります。最新版(2022年5月発売)は⇩をご覧ください。

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