70:支援の倫理

70:支援の倫理

個人情報の適切な取り扱いについては,2005年に全面施行された個人情報の保護に関する法律個人情報保護法)に規定されており,第23条では情報の第三者への提供について本人の同意なしに行うことができないとされている。また,公認心理師法第41条には,「公認心理師は,正当な理由がなく,その業務に関して知り得た人の秘密を漏らしてはならない。公認心理師でなくなった後においても,同様とする」とある。心理支援に関わる者にはこのようなプライバシーへの配慮が義務付けられており,こうして秘密が守られるからこそ要支援者が安心して悩みや自身の思いを話すことができるのである。

ただし守秘義務の適用範囲には例外もある。1969年にカリフォルニア大学で起きたタラソフという女子学生がボダーという男子学生に殺害された事件では,面接でボダーがタラソフへの殺意を表明していたが治療者はタラソフに危険を警告していなかった。彼女の両親による訴訟において最高裁判決は治療者には警告義務があるとした。守秘義務と通告の問題には倫理上のジレンマがあるが,虐待など緊急性の高い問題や自他に危害を加える恐れがある場合,また法による定めがある場合には例外にあたる。秘密保持の方法,援助方法や援助の効果とリスクなどについて,要支援者に十分に説明し,同意を得たうえで実際の面接を行うことも重要である。こうした手続きをインフォームド・コンセントという。金沢(2006)は心理臨床家の職業倫理の7原則をまとめているが,インフォームド・コンセントを得て相手の自己決定権を尊重することもその1つであり,個人の尊厳と自己決定の尊重の重要性が示されている。

(三後美紀)

文  献
  • 金沢吉展(2006)臨床心理学の倫理を学ぶ.東京大学出版会.

※用語の出典は,『公認心理師基礎用語集 よくわかる国試対策キーワード117』(2018年8月発売)となります。最新版(2022年5月発売)は⇩をご覧ください。

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