5:公認心理師の業務

5:公認心理師の業務

公認心理師法第2条では,公認心理師の4つの役割が明示されている(→)。これら4つの役割について,公認心理師が実施する具体的業務を挙げていく。

「1.要支援者の心理状態を観察し,その結果を分析すること」の具体的方法としては面接法,観察法,検査法の3つがあげられ,それぞれ,要支援者に対する心理面接,行動観察,心理検査が具体的業務として実施される。これは,要支援者の抱える問題の背景やメカニズムを見立て,今後の心理支援の方針を設定するために行うものであり,心理アセスメントと呼ばれる。心理アセスメントを実施する際には,特定の学派や理論にとどまらず,要支援者にとって適切な方法を用いることが重要である。

心理アセスメントに基づき,「2.要支援者に対し,その心理に関する相談に応じ,助言,指導その他の援助を行う」。要支援者への支援については公認心理師が要支援者本人に対し心理療法を実施することや,より良い支援を受けるために他機関へ紹介をおこなうリファーなどがあげられる。心理アセスメントの内容や,治療方針については,要支援者のニーズなどから決定され,本人や家族等に対して説明を行い,インフォームド・コンセントを得る必要がある。

また,問題を改善するために,本人だけでなく「3.要支援者の関係者に対し,その心理に関する相談に応じ,助言,指導その他の援助を行う」ことも公認心理師の重要な業務であるとされている。例えば,子どもの問題を主訴として,親子が相談機関を訪れた場合,子どもに対する心理療法と並行して,子どもとの関わり方について親の相談を受けることなどがあげられる。要支援者の関係者への援助を行うことで,本人を取り巻く環境が変化し,問題の改善につながることも多い。そのため,家族機能のアセスメントも含め,関係者に対する心理支援は重要と言える。

ケースによっては,保健医療・福祉・教育等その他の分野の関係者との連携が義務付けられている。例えば,保健医療領域では,医師,看護師,ソーシャルワーカーなどの医療スタッフと公認心理師が連携して要支援者を援助するチーム医療(→74)が実施されている。福祉領域では,虐待への対応(→78)の際に,児童福祉士,医師,保健師などとの連携が必須となっている。教育領域では,スクールカウンセラー(→87)が教職員や家庭等との連携を行うことがあげられ,文部科学省は「チームとしての学校(チーム学校;→7)」のあり方を答申している(2015)。このように立場や視点が異なる多職種との連携を行うことで,要支援者の生物的・心理的・社会的観点(生物心理社会モデル→8)から援助することができると考えられる。公認心理師は,秘密保持義務を保ちつつも,自らの心理アセスメントを各分野の関係者と共有し,それぞれの支援が効果的に発揮されるように努めなければならない。

直接的な心理支援のみならず,「4.心の健康に関する知識の普及を図るための教育及び情報の提供を行うこと」も役割として義務付けられている。つまり,心の問題を呈していない人たちに対する予防的活動を意味する。国内では,小集団を対象に,心理的問題解決に関するスキルや知識の獲得を行う心理教育的プログラムが実施されている。授業,講義形式で行うこともできることから,参加者の抵抗感が少なく実施できるという利点も挙げられている(Cardemil & Barber, 2001)。心理的な問題や症状を未然に防ぐためにも,公認心理師が心理教育的活動を実施していくことは大切である。

(三谷真優)

文  献
  • Cardemil, E. V. & Barber, J. P.(2001)Building model for prevention practice: Depression as an example. Professional Psychology: Research and Practice, 32; 392-401.

※用語の出典は,『公認心理師基礎用語集 よくわかる国試対策キーワード117』(2018年8月発売)となります。最新版(2022年5月発売)は⇩をご覧ください。

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