52:心理社会的課題

52:心理社会的課題

障害者権利条約の批准と障害者差別解消法(2016[平成28]年)の制定をうけ,障害を理由とする社会的障壁の除去と合理的配慮が求められるようになった。個人の能力・障害とその環境を鑑みて,ノートテイクや教室内座席配慮,試験時間延長・別室受験などの合理的配慮を行うよう義務付けられた。合理的配慮は多分野に及ぶ包括的な概念であり,学校教育に限らず社会全体で検討し推進していく必要がある(守屋,2015)。教育機関では,障害のある子どもが学校生活に能動的に参加し,仲間と共同の関係を作ることが目的の特別支援教育(2007年制度制定)や,各教科の授業は主として通常の学級で受けながら,心身の障害の状態に応じた特別の指導を特別の場で受ける通級指導などの支援が行われている(湯浅,2008)。これをより推し進めた障害の有無に関係なく同じ場で学ぶインクルーシブ(inclusive)教育システムも実践されている。

就学前の支援としては,障害のある子どもに対して社会性の発達を促し,能動的に集団活動に参加するための基礎を築いていくことを目的とした療育が行われる。学校卒業後の就労にあたっても,障害を抱える人が地域で自立した生活を送るために,就労の機会を提供するだけでなく,事業所や企業内における作業訓練や職場実習,職場定着の支援などを行う就労支援が重要となっている。また全年齢を通して,障害によって生活に何らかの不自由が生じている場合には,機能低下した状態を改善し自立的な活動のサポートするために理学療法や作業療法,言語療法などのリハビリテーションを行う。

(中島卓裕・永田雅子)

文  献
  • 守屋國光編(2015)特別支援教育総論―歴史,心理・生理・病理,教育課程・指導法,検査法.風間書房.
  • 湯浅恭正編(2008)よくわかる特別支援教育.ミネルヴァ書房.

※用語の出典は,『公認心理師基礎用語集 よくわかる国試対策キーワード117』(2018年8月発売)となります。最新版(2022年5月発売)は⇩をご覧ください。

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