20:知覚

20:知覚

知覚とは,生活体が感覚受容器を通して外界や自己の内部状態を捉える働きおよびその過程をさす。感覚も同様の機能を意味するが,感覚は単純な刺激の受容であるのに対し,知覚はより高次の情報処理過程であると定義されており,感覚として得らえた情報を過去の経験や学習に基づいて処理し,意味や時空間的内容まで備えているという点で区別される。例えば,我々は外界からの光刺激を受容器である網膜で受け取ることによって感覚としての映像が得られるが,そこから周囲の空間の立体的な情報や動きを把握するのは知覚の働きであり,奥行き知覚や運動知覚などと呼ばれる。また,視覚刺激がある程度変化しても,認識した物体の明るさや大きさ,形,色などは同一であると分別されることは知覚の恒常性として知られている。一方,このような補正を行うために,外的刺激を客観的な性質通りに認識できない現象は錯覚と呼ばれ,幾何学的錯視が有名である。多くの情報が同時に与えられているような環境下では,主体にとって重要な情報だけを選択し,それに意識の注意が向けられる機能は選択的注意やカクテルパーティー効果として知られている。また,知覚は単一刺激の明るさや色,音ピッチを捉えるような比較的単純な低次知覚と,個々の物体をそれ以外の物体や背景と分離したり,質感を捉えるような高次知覚に分類されている。知覚は1つの機能が停止していると神経細胞を再構築して2つ以上の知覚系の機能を統合することがある。例えば,先天的な視覚障害者は他の知覚が強化され,通常視覚に使用する大脳皮質に新たな神経が接続され,視覚以外で高度な知覚を持つことが知られており,これは知覚の可塑性と呼ばれる。知覚の異常や障害は神経の問題と結びついているため,知覚の検査や知覚回復のためのリハビリテーションも行われている。

(谷 伊織)

※用語の出典は,『公認心理師基礎用語集 よくわかる国試対策キーワード117』(2018年8月発売)となります。最新版(2022年5月発売)は⇩をご覧ください。

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