51:心理社会的な支援法

51:心理社会的な支援法

複数の支援法のうち,どの方法を支援に取り込むかは要支援者・環境のアセスメントの結果および支援の目的に基づいて選択しなければならない。ここでは発達障害児者に対する代表的な支援法である認知行動療法,応用行動分析,SST,TEACCH,ペアレント・トレーニングについて紹介する。

認知行動療法(Cognitive Behavioral Therapy;CBT)

CBTとは,人間の行動を成り立たせているさまざまな要素,その中でも特に認知を切り口として問題解決を目指す方法である(下山,2011;→63)。CBTは現在幅広い領域において用いられており,明確な治療目標とアセスメントに基づく計画的な介入,介入経過のモニタリング,及び介入結果の科学的な評価によって構成されているのが特徴である。

応用行動分析(ABA)

ABAはスキナーSkinner, B.F.の行動理論をベースとし,オペラント条件づけから発展した行動療法の理論モデルの一つである(→63)。学習心理学の「強化」という考え方が理論の中心であるが,具体的な技法を生み出す理論というより,むしろクライエントや問題をみる見方に関する理論といえるものである(下山,2009)。

ソーシャルスキル・トレーニング(Social Skill Training;SST)

SSTとは,発達障害児が社会生活や人との関係を上手に営んでいくために必要となる技能や能力を人との相互作用を通して身につけていけるよう,それらの学習を積極的,かつ効率よくプログラム化したものである(日本発達障害学会,2012)。教示・モデリング・リハーサル・フィードバックの段階を経て学習したスキルを,どのような場面でも行えるように汎化させていくのが重要となる。

TEACCHプログラム

TEACCH(Treatment and Education of Autistic and related Communication handicapped Children;ティーチ)とは,ASD児者の自立的な生活を目標に,障害の特性を尊重し,周囲の環境を変容させ,その個人が備えている適応機能を向上させることを基本理念とした支援プログラムである(佐々木,2008)。TEACCHでは,構造化と呼ばれる環境調整が特徴である。物理的構造化・時間の構造化・作業の構造化・課題の組織化といった構造化を,学校教育の場面だけでなく,職場・余暇・家庭などの生活のあらゆる場面で取り入れていくことがポイントとなる。

ペアレント・トレーニング(ペアトレ)

ペアレント・トレーニングとは,応用行動分析(ABA)をベースに開発された,発達障害児をもつ保護者を対象としたプログラムである。その主目的は,子どもの好ましい行動を増やし,好ましくない行動をへらすための技術を親が習得することである(岩坂,2012)。標準版全10回のグループプログラムを通して,子どもへの関わり方のコツが親のニーズに基づいて系統的に学習できるように構成されている。

(中島卓裕・永田雅子)

文  献
  • 岩坂英巳編(2012)困っている子をほめて育てるペアレント・トレーニングガイドブックー活用のポイントと実践例.じほう.
  • 日本発達障害学会監修(2012)発達障害支援ハンドブック─医療,療育・教育,心理,福祉,労働からのアプローチ.金子書房.
  • 佐々木正美(2008)自閉症児のためのTEACCHハンドブック.学習研究社.
  • 下山晴彦編(2009)よくわかる臨床心理学.ミネルヴァ書房.
  • 下山晴彦編(2011)認知行動療法を学ぶ.金剛出版.

※用語の出典は,『公認心理師基礎用語集 よくわかる国試対策キーワード117』(2018年8月発売)となります。最新版(2022年5月発売)は⇩をご覧ください。

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