54:関与しながらの観察

54:関与しながらの観察

関与しながらの観察はそもそもは心理療法における心理療法家に求められる役割,活動のことである。精神医学における対人関係の重要性を主張した新フロイト派のサリヴァンSullivan, H. S. が提唱した概念であり,観察者(治療者)は精神療法において自らの影響を排除することができないとした。

また,関与しながらの観察は,心理アセスメントの方法として関与観察(参加観察,参与観察)と表記されることが多い。関与観察とは,自然観察法の一つで,観察者が状況や対象者にかかわり行動をともにしながら観察を行うことである。大きく,交流的観察,面接観察,非交流的観察に分類される。心理臨床の場では,クライエントへの治療的かかわりが前提となるためこの形態をとることが多く,クライエントの動作,言動,またそこで生じているセラピスト自身の心の動きなど,すべてのものが観察対象となりうる。その他,フィールドワーク研究や事例研究においても用いられる。行動をともにすることで外部からは観察困難な事象を明らかにできるといった長所がある一方で,客観性を求めることができないという短所がある。客観性を求める研究手法として用いるのであれば,他の研究手法とともに用いられることが望まれる。なお,観察対象者とかかわらない観察法は関与観察(非参加観察,非参与観察)という。

(田中あかり)

文  献
  • 下山晴彦編(2000)臨床心理学研究の技法シリーズ・心理学の技法.福村出版.
  • Sullivan, H. S.(1954)The Psychiatric Interview. W. W. Norton.(中井久夫・松川周悟・秋山剛ほか訳(1986)精神医学的面接.みすず書房.)
  • 氏原寛・亀口憲治・成田善弘ほか編(2004)心理臨床大辞典(改訂版).培風館.

※用語の出典は,『公認心理師基礎用語集 よくわかる国試対策キーワード117』(2018年8月発売)となります。最新版(2022年5月発売)は⇩をご覧ください。

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