105:精神保健福祉法

105:精神保健福祉法

現行法に至るまで,昭和40(1965)年に精神衛生法が改正され,昭和62(1987)年に精神保健法が制定された。「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(精神保健福祉法)」は,平成7(1995)年に精神保健法に福祉関連の条項が付け加えられた内容で大幅に改正された形での制定となった。

精神保健福祉法は,1)精神障害者の医療および保護,2)精神障害者の社会復帰の促進と自立への援助,3)発生の予防その他国民の精神的健康の保持増進,4)「精神障害者の福祉の増進」および「国民の精神保健の向上」の目標の実現,を目的としている。この法律は,「統合失調症,精神作用物質による急性中毒又はその依存症,知的障害,精神病質その他の精神疾患を有する者」を対象と定めており,WHOのICD-10が準用されている。また,任意入院措置入院緊急措置入院医療保護入院応急入院の5つの入院制度が設けられており,任意入院以外は非自発的な制度である(表㉓2;193頁)。精神保健指定医は,厚生労働省が指定する資格であり,精神障害者の人権を制限する入院の判定や処遇に関わるなどの適切な精神医療を確保するための重要な役割を担っている。自殺企図や自傷行為切迫,他者に対する暴力や著しい迷惑行為,急性精神運動興奮等がある入院患者は,行動制限として隔離の対象になる。心神喪失者等医療観察法が施行される平成17(2005)年まで,精神症状により重大な他害行為を行った精神障害者は精神保健福祉法の措置入院による治療が行われることが多かったが,都道府県によって運用の格差や措置入院時の退院支援の差が大きく,問題となっていた。医療観察法により,触法行為で無罪になった精神障害者に対して,治療から社会復帰まで国(司法)が一貫した枠組みで関わることで地域間の対応の格差がなくなることが期待されている。

(浦田有香)

文  献
  • 阿部裕二編(2017)社会保障[第5版]―社会保障制度 社会保障サービス.弘文堂.
  • 一般財団法人日本心理研修センター監修(2018)公認心理師現任者講習会テキスト[2018年版].金剛出版.
  • 電子政府の総合窓口「e-Gov法令検索」:http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0100/(2018年5月15日閲覧)
  • 古屋龍太編(2017)精神保健福祉に関する制度とサービス[第3版].弘文堂.
  • 厚生労働省(2007)医療機関における院内感染対策マニュアル 作成のための手引き(案)(070413 ver. 3.0).http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/isei/i-anzen/hourei/dl/070508-5.pdf(2018年5月18日閲覧)
  • 厚生省(1994)平成6年厚生省告示第374号:地域保健対策に関する基本的な指針.

※用語の出典は,『公認心理師基礎用語集 よくわかる国試対策キーワード117』(2018年8月発売)となります。最新版(2022年5月発売)は⇩をご覧ください。

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