16:実験計画の立案

16:実験計画の立案

実験とは,実験者が状況や条件に何らかの人為的な操作を加え,その結果,検討したい事象に対してどのような影響があったのかを明らかにする研究手法である。操作する要因を独立変数,それによって影響を受けると想定される要因を従属変数という。その際,剰余変数と呼ばれる,実験者の意図しない変数によって結果が影響されないよう,余分な要因をできる限り排除することが重要である。

実験の計画では,まず文献研究を行い検討したい事象がこれまでの心理学においてどのような位置づけにあるのかを確認する。文献研究に基づいて検討したい事項が定まったら,仮説を設定する。仮説とは,実験によって明らかにしたい事項に関する“予測”や“見込み”を述べたものである。多くの心理学研究では,仮説の検証が目的となる。

仮説を検証するのに最もふさわしい手続きを検討する。例えば「女性においては,直前にリラックス音楽を聴くと,スピーチ場面での緊張が低い」という仮説であれば,実験参加者はスピーチ可能な年齢の女性を選定せねばならない。独立変数であるリラックス音楽の聴取の有無を操作するとともに,剰余変数を統制するために,参加者を完全に無作為に各条件に割り当て(random assignment=無作為配置;Solso et al., 1989),リラックス音楽以外の音が参加者に聞こえないよう環境を整える。刺激,材料とは,実験において操作を行うために参加者に対して呈示するものであり,上記の例ではリラックス音楽にあたる。また実験において,パソコン画面に刺激を呈示したり,生理的,脳科学的指標によって測定する場合には,適切な装置を用意しておく必要がある。

(山内星子

文  献
  • Solso, R. L. & Johnson, H. H.(1989)An Introduction to Experimental Design in Psychology, 4th ed. Harper Collins.(浅井邦二監訳(2002)改定心理学実験計画入門.学芸社.)

※用語の出典は,『公認心理師基礎用語集 よくわかる国試対策キーワード117』(2018年8月発売)となります。最新版(2022年5月発売)は⇩をご覧ください。

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