67:支援方法の選択・調整

67:支援方法の選択・調整

現在,心理支援の技法や理論は400近くあると言われているが,実際の心理支援では,要支援者の特性や状況に応じて,最も適切な支援方法を選択し,調整していく必要がある。適切な支援方法を選択する際,治療効果についての客観的な根拠エビデンスが1つの判断材料となる。エビデンス・ベースド・アプローチ(EBA)は,単なる理論的推測ではなく,エビデンスに基づいて支援方法を選択しようとする立場である。現在,DSM-5などの診断基準に基づき,特定の症状や疾病に対する「経験的に支持されている心理療法(ESTs)」がリスト化されている。例えば,うつ病に対する認知療法や対人関係療法,境界性人格障害への弁証法的行動療法などである。EBAでは,このような治療効果が明確に示されている方法を優先的に選択することが推奨される。また,EBAの研究結果からは,多職種協働の有効性が指摘されており,生物心理社会モデル(→10)との相性も良い。また,支援方法の選択には,エビデンスのみではなく,要支援者の価値観や志向性,文化的背景などを考慮することが重要となる。例えば,多元的アプローチ(Cooper & McLeod, 2011)では「多くの異なる事柄が要支援者にとって援助的であり得ること」「何が最も援助的であるかは要支援者と話し合うこと」が基本原則となっている。つまり,適切な支援方法を要支援者と協働で決めていくのである。当然,支援の土台となるラポールは軽視できない。

このように支援方法の選択には,治療効果のエビデンスや要支援者の援助要請を多角的・総合的に考慮していくことが必要となる。また,支援者側に生じる感情である転移(→62)が支援方法の選択や実践に影響することもあるので注意する必要がある。

(杉岡正典

文  献
  • Cooper, M. & McLeod, J.(2011)Pluralistic Counseling and Psychotherapy. SAGE.(松武康弘ほか監訳(2015)心理臨床への多元的アプローチ.岩崎学術出版社.)

※用語の出典は,『公認心理師基礎用語集 よくわかる国試対策キーワード117』(2018年8月発売)となります。最新版(2022年5月発売)は⇩をご覧ください。

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