38:集団意識・集団行動

38:集団意識・集団行動

社会的影響の代表的なものに社会的促進社会的抑制があり,これは他者の存在によってある課題のパフォーマンスが高まる/低下する現象のことである。他者の存在が生理的な覚醒水準を高め,行動レパートリーの上位にある行動が生起しやすくなる結果,社会的促進/抑制が生じると考えられている(Zajonc, 1965)。

個人対集団について,個人の利益の追求が集団全体にとってマイナスの帰結を招く状況は社会的ジレンマと呼ばれる。社会的ジレンマとは「各人が協力または非協力を選択できる状況において,個人にとっては非協力を選択した方が望ましい結果が得られる一方で,全員が非協力を選択した結果は全員が協力を選択した結果よりも望ましくないものとなる状況」である。社会的ジレンマ状況では利害対立としての葛藤が生じやすく,葛藤は個人や集団の目標が他者や他集団の行動によって妨害された状態である紛争に発展してしまうこともある。葛藤紛争を解決し和解に至るためには,他者や他集団へ直接的に接触する機会が重要である(Allport, 1954)。集団間葛藤は,自分を所属集団と同一化し,自分自身を集団の一部として自覚し行動する社会的アイデンティティからも生じうる。社会的アイデンティティは,内集団への協力を促進する一方で,内集団を外集団よりも優位に立たせようとする内集団ひいきの原因となる(Tajfel & Turner, 1979)。人と人とのつながりであり関係性の集合を表す社会的ネットワークの観点からも集団研究は行われており,ネットワーク内に存在する関係性の強さがソーシャルサポート(→48)などの資源を規定する。

(加藤 仁

文  献
  • Allport, G. W.(1954)The Nature of Prejudice. Oxford; Addison-Wesley.
  • Tajfel, H. & Turner, J. C.(1979)An integrative theory of intergroup conflict. The Social Psychology of Intergroup Relations, 33; 74.
  • Zajonc, R. B.(1965)Social facilitation. Science, 149; 269-274.

※用語の出典は,『公認心理師基礎用語集 よくわかる国試対策キーワード117』(2018年8月発売)となります。最新版(2022年5月発売)は⇩をご覧ください。

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