41:認知の発達

41:認知の発達

発生的認識論を確立したことで名高いピアジェPiaget, J.(1970/1972)は,認知機能の発達を,感覚運動期(誕生から~2歳ごろまで),前操作期(2~6歳頃まで),具体的操作期(6歳~12歳頃まで),形式的操作期(12歳以降)の4段階で示している。感覚運動期は,表象的な思考をもたずに外界と直接触れ合うことでその事物を認識している段階であり,前操作期以降は,表象的な思考を伴って外界を認識するようになる。ピアジェはこれら4段階を通じて,子ども自らが外界との相互作用の中で能動的に不均衡を経験しながら,内的な認知構造を高次化していくと考えた。

一方,ヴィゴツキーVygotsky, L.S.は,社会的環境に重点を置き,他者からの助け(足場かけ;scaffolding)を得ることで,成熟しつつあるが未だ一人では到達し得ない(発達の最近接領域[ZPD])認知活動を行なうことが可能となり,のちにその活動が内在化され自力で遂行できるように発達していくと考えた。知能の構造は主に因子分析からさまざまな形に分類されてきた。その中でもキャッテルCattell, R.は,知能を流動性知能(情報処理の能力)と結晶性知能(経験の蓄積をいかす能力)に大別したことで知られる。結晶性知能は成長し続けることがわかっており高齢期の発達の可能性を示している。2000年以降ではスタンバーグStanberg, R.らが経験や社会的文脈を考慮した実践的知能の検査を開発しており,発達の可塑性と社会文化的環境に重点を置いたヴィゴツキーの理論が新たな知能観の土台になっているといえる。

(若林紀乃)

文  献
  • Piaget, J.(1970)L’Épistémologie Génétique. Universitaires de France.(滝沢武久訳(1972)発生的認識論.白水社.)

※用語の出典は,『公認心理師基礎用語集 よくわかる国試対策キーワード117』(2018年8月発売)となります。最新版(2022年5月発売)は⇩をご覧ください。

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