28:感情喚起

28:感情喚起

感情喚起に関しては,さまざまな感情の理論が仮定され,それらを支持する脳神経学的基盤研究も盛んに行われており,扁桃体,視床下部,島皮質,前頭前野腹内側部などを中心にさまざまな感情の神経生理学的機序の仮定がある。

その代表的なものとして意思決定において情動的な身体反応が重要な信号を提供するというソマティック・マーカー仮説があり,扁桃体が感情反応の起点および身体反応を変化させる機能を担い,体性感覚野と島皮質で身体反応をモニターしており,その処理において前頭前野腹内側部が過去の経験や文脈に基づいて扁桃体の活動を調整する重要な役割を担っているとされている(Damasio, 1994;図1参照)。

図1 ダマシオDamasio, A. R.による感情喚起の機序

さらに,迅速に生じる皮質下(大脳辺縁系)の低次回路(低位経路)と,高次認知処理が介在して,より複雑な情動の生起に関わる皮質経由の回路である高次回路(高位経路)の2経路が注目されている(LeDoux, 1996;図2参照)。

図2 ルドゥーLeDoux, J.による扁桃体への低位経路と高位経路

(小海宏之

文  献
  • Damasio, A. R.(1994)Descartes’ Error: Emotion, Reason, and the Human Brain. Ink Well Management.(田中三彦訳(2010)デカルトの誤り:情動,理性,人間の脳.筑摩書房.)
  • LeDoux, J.(1996)The Emotional Brain: The Mysterious Underpinnings of Emotional Life. Brockman.(松本元・川村光毅・小幡邦彦・石塚典生・湯浅茂樹訳(2003)エモーショナル・ブレイン:情動の脳科学.東京大学出版会.)
  • 大平英樹編(2010)感情心理学・入門.有斐閣.

※用語の出典は,『公認心理師基礎用語集 よくわかる国試対策キーワード117』(2018年8月発売)となります。最新版(2022年5月発売)は⇩をご覧ください。

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