46:ライフサイクル論

46:ライフサイクル論

ユングJung, C.G.(1946)は,人の一生を「少年期」「成人前期」「中年期」「老人期」の4つの周期(ライフサイクル)があることを指摘した。また,エリクソンErikson, E.H.(1959)はこれまでのフロイトFreud, S.の心理性的発達論に対して,心理-社会的側面を重視した心理社会的発達段階を提唱し,各時期には発達課題とそれにともなう心理的危機があることを提示し,ライフサイクル論を確立させた(表1)。発達段階は,発達途上の構造上,機能上の変化,またはその時期の特徴を総括的に把握するものとして区分され,在胎9週から出生までの胎児期,誕生から歩行や言語を話せるようになるまでを乳児期,自分のことがある程度でき自由に話せるようになる6歳ごろまでの幼児期,第二次性徴が始まるごろまでを児童期,生理的に成熟し,アイデンティティを確立するまでを青年期,家庭生活や職業生活が安定する40代ごろまでを成人期,40歳ごろから65歳ごろまでの社会的に中心の役割を担い,次世代への継承を課題とする中年期,それ以降の老年期に区分される。青年期には,他者と親密な関係を形成することで,友情や恋愛関係を築いていくが,成人期になると,親密性に基づいた結婚をすることで,新たな家族を形成すること,また自分の職業に関する意識や自覚(職業意識)をもとに自らのキャリアを積んでいくなかでライフコースの選択をしていくことになる。

表1 Eriksonの心理社会的発達の段階

夫婦だけの生活から,子どもが生まれ家族が増えると,次世代を育てていくという課題に直面することになる。子どもを育てる責任を果たしていくために,社会的行動や態度などをそれまでの生活スタイルを変えることをよぎなくされ,子どもとの関係を築いていくプロセスの中で親としての発達を果たしていく。

中年期になってくると,子どもが成長し,巣立っていくことであらたな課題に直面することになってくる。ユングJungは中年期を「人生の正午」とよんだが,この時期,心理的ストレスが増大し,アイデンティティの問い直しがおこることで「中年期危機」を迎えることが指摘されている。また,generabilityはエリクソンが提唱した中年期の発達課題であり,「次世代を確立させ導くことへの関心」と定義されたが,現在では創造性,世話,世代継承性への関心および行動ととらえられ,老年期にわたる課題としてとらえられている。

(永田雅子

文  献
  • Erikson, E.H.(1959)Identity and the life cycle. International Universities Press.(西平直・中島由恵訳(2011)アイデンティティとライフサイクル.誠信書房.)
  • Jung, C.G.(1946)Die Lebenswende in seelenproblem der gegenwart.(鎌田輝男訳(1979)総特集 ユング─人生の転換期.現代思想臨時増刊.青土社.)

※用語の出典は,『公認心理師基礎用語集 よくわかる国試対策キーワード117』(2018年8月発売)となります。最新版(2022年5月発売)は⇩をご覧ください。

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