89:少年事件・家事事件

89:少年事件・家事事件

少年非行への支援

少年非行への支援の根拠となる法律は少年法である。少年法は,「少年の健全な育成を期し,非行のある少年に対して性格の矯正及び環境の調整に関する保護処分を行うとともに,少年の刑事事件について特別の措置を講ずること」(第1条)が目的とされており,少年の可塑性に期待し,刑罰ではなく保護を原則とする保護主義の理念が定められている。少年法(→114)では,①犯罪少年(14歳以上20歳未満で罪を犯した少年),②触法少年(14歳未満で刑罰法令に触れる行為をした少年),③犯少年(20歳未満で一定の事由があり,性格や環境から,将来,犯罪・触法行為に至るおそれのある少年)が対象とされ,これらを非行少年と総称する。

少年事件では「全件送致主義」という原則が採用されており,犯罪少年は嫌疑が認められた事件はすべて家庭裁判所に送致され,家庭裁判所によって刑事手続・少年審判手続どちらで扱うかが決定される。少年に刑罰を科す場合には,検察官から家庭裁判所へ送られてきた事件を再び検察官へと送り返す検察官送致(いわゆる「逆送」)が行われる。

家庭裁判所では,少年に対し,家庭裁判所調査官による面接,心理テストなど専門的な調査が行われる。調査・審判のため必要な場合には,観護措置により少年鑑別所に少年を収容し,資質の鑑別を実施する。このような調査の結果,事件が軽微で調査を通じた教育的な働きかけによって少年の更生が十分に期待できる場合には,審判不開始となる。また,審判を開いた事件でも,保護処分までの必要がない事件は不処分となる。

処分の必要が認められる場合は,保護処分が決定される。保護処分には,①保護観察,②児童自立支援施設または児童養護施設への送致,③少年院への送致がある。少年の処分を直ちに決めることが困難な場合には,一定期間,家庭裁判所調査官の観察(試験観察)に付すことができ,必要があれば併せて民間ボランティアなどに補導委託を行うこともできる。

司法・犯罪領域における支援の特徴は,医療・福祉・教育などの多領域を横断する支援であることがあげられる。そのため,少年非行への支援に関わる心理専門職は,ケースの全体状況を把握し,多機関・多職種との円滑な連携を図り,その前提のうえで求められる専門的スキルを発揮しながら個々のケースに当たることが求められていると言える。

離婚後の面会交流

面会交流とは,離婚後に子どもを養育・監護していない方の親によって行われる子どもとの面会および交流のことである。面会交流は,子ども自身の権利であり,子どもの権利条約第9条3項では,「親の一方または双方から分離されている子どもが,子どもの最善の利益に反しない限り,定期的に親双方との個人的関係および直接の接触を保つ権利を尊重する」と規定されている。こうした面会交流の背景には,離婚後も子どもが親と交流し,これまでと変わらない愛情を父母双方から受けることが,子どもの人格形成に必要という考えがある。わが国では,2011年の民法改正まで面会交流の根拠となる明文規定がなかったが,子ども虐待防止に向けた親権制度の見直しを目的とした2011年民法等一部改正の中で,民法第766条に協議離婚の際,考慮すべき事項として面会交流が明記されるに至った。面会交流をめぐる法的紛争については,家庭裁判所の家事事件として扱われ,面会交流調停・審判手続きにおける調査および面会交流の方法などの調整が行われる。また,親教育や面会交流支援などにおいては,心理専門職の活躍に注目が集まっている。

(千賀則史)

※用語の出典は,『公認心理師基礎用語集 よくわかる国試対策キーワード117』(2018年8月発売)となります。最新版(2022年5月発売)は⇩をご覧ください。

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