81:障害児(者)への支援

81:障害児(者)への支援

我が国の障害児(者)への施策は,戦後の「措置制度」から,2003年に「支援費制度(障害のある人自身が,市区町村からの福祉サービスの支給決定を受け,サービスを受ける事業所を選択し,契約をする仕組み)」に転換した。その後財政的課題や,身体障害知的障害,精神障害という障害種別間の格差,地域格差等の課題を解消するために,平成17(2005)年に「障害者自立支援法」が制定された。この法律により,障害の種類にかかわらず共通した福祉サービスを共通の制度により提供することとなった。ただ,サービス利用者に原則として1割の自己負担を設定したことによる弊害や批判は多く,平成22(2010)年の改正により,利用者の収入に見合った自己負担をする設定に戻された。また発達障害者が対象に含まれることが明記された。その後,平成25(2013)年には,障害福祉サービスの充実等,障害者の日常生活および社会生活を総合的に支援することを目的とした「障害者総合支援法」が制定された。この法律では,「障害者」の定義が拡大され,また,障害のある人それぞれがどのような支援をどの程度必要とするかという度合いによってサービスの給付決定がなされることになった(「障害支援区分」)。平成30(2018)年の改正では障害福祉サービス等報酬の改定もされた。

このように,国による施策として障害者支援の充実が図られることや,ノーマライゼーション(環境を整備することで障害のある者もない者も均等に当たり前に生活できる社会を目指す理念)を普及していくこと,インクルーシブ教育システム(障害のある者と障害のない者が共に学ぶ仕組み)を構築すること等によって,すべての人が相互に人格と個性を尊重し合う「共生社会」を実現していくことが望まれている。

なお,身体障害者の割合は高齢者に多いため,人口の高齢化により身体障害者数は今後さらに増加していくことが予想される。また,知的障害者(療育手帳取得者)も近年増加しており,知的障害に対する認知度の高まりや,周産期医療の進歩による低出生体重児の増加等が要因の一つと考えられている(障害分類→50)。

障害者支援をしていく中で,自身あるいは身近な人等が障害を負った場合にその障害をいかに受容するかがテーマとなる場合がある。障害受容とは,自身あるいは身近な人等が負った障害や,その障害による今ここの現実を見つめ,受け入れることを指す。その過程は,「段階説」や「慢性的悲哀説」等が提唱されているが,肯定と否定の両面の感情をもつ螺旋状の過程とも考えられており(中田,1995),またその時期や期間は個々に異なるものである。そのため,援助者は「受容すること」を強要するのではなく,個々の過程に伴走する姿勢であることが重要である。加えて,障害受容に対する支援と並行して,自身あるいは身近な人が,それぞれの障害の特徴や,特徴に合った関わり方や考え方を体得することを目的とした心理教育が必要となる場合も多い。心理教育は,精神障害の再発防止に効果的とされる方法であるが,他の障害にも応用できる。対象者が,困難を受け止め,乗り越える技術を習得し,現実に向き合う力や自信をつけ,社会資源を主体的に利用できるようになることが目指される。

(佐野さやか)

文  献
  • 中田洋二郎(1995)親の障害の認識と受容に関する考察―受容の段階説と慢性的悲哀.早稲田心理学年報,27; 83-92.

※用語の出典は,『公認心理師基礎用語集 よくわかる国試対策キーワード117』(2018年8月発売)となります。最新版(2022年5月発売)は⇩をご覧ください。

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