心理面接の道具箱(9)子どもの心理療法における「おもちゃ」の効果的活用[3]|丹 明彦

丹 明彦(すぎなみ心理発達研究センターほっとカウンセリングサポート)
シンリンラボ 第9号(2023年12月号)
Clinical Psychology Laboratory, No.9 (2023, Dec.)

ウンとかチンとかブーとか

しがない一大学教員であった筆者を一躍有名にしてくれたのが『ブリッとでるワン』(タカラトミー)である注1)。えっ,両方ともご存じない? まあ,それはどうぞよしなにということで。ともあれ,筆者はかつて「うんちをぶりっとするワンちゃん」のおもちゃがいかに凄いかについて述べた訳である注2)。もう10年も前のお話なのでこのおもちゃもさすがに絶版。あの愛しきでるワンくんは今や輸入でも入手困難。ネットで探しても見つからない。しかーし,でるワン2号と呼んでいる「New Doggie Doo Game」(Goliath)や,イマイチ好きになれないこ洒落たコーギー犬「Doggie Doo Corgi」(Goliath)はAmazonで未だに購入できるので,機会があったら是非可愛がってあげて欲しい。そしてこの深みを味わって頂きたいものである。

注1)ブリッとでるワンのタカラトミー公式YouTubeがこちら。https://www.youtube.com/watch?v=K8wPlasc6us
注2)丹明彦(2014)人間と遊び(第1回)プレイセラピー再考.子どもの心と学校臨床,10; 109-118.  今は亡きこの雑誌での連載をまとめたのが,丹明彦(2019)プレイセラピー入門. 遠見書房.この本の中でも「オススメ遊具コーナーその1」として掲載されている。

という訳で今回は下ネタである。下ネタに走るときは疲れているとき,と偉い誰かが言っていた気がするが,下ネタなくして子どものセラピーは成立せず,ともっと偉い誰かが言っていた気もする。今はそんなに疲れていない気もするので,後の教えの方に従うこととしよう。

『おならモンキーブーブブー』(シーシーピー)

まずは,『おならモンキーブーブブー』(シーシーピー)。これネーミングそのままのおもちゃ。モンキーの指を引っ張ると少しずつ膨らんでくるヒップ。いつ破裂するか分からないドキドキハラハラの後にやってくるブーブブー。子どもとの個別セラピーでも面白いが,グループだとさらに盛り上がる。ゴムでできたリアルなヒップの膨らみ方は毎回少し違うので,別の子のところでブーブブーしそうなのに,なぜだかいつも同じの子のところでブーブブーするので笑ってしまう。でもやがて誰もが自分のところでブーブブーすることを心待ちするようになり,ブーブブーされるとほっと安心し,喜びに包まれるからあら不思議。

『トイレトラブル』(ハズブロ)

自分の所で出ると嬉しいといえば,『トイレトラブル』(ハズブロ)。おもちゃにそこまでするか? というトイレの精巧な再現性とサイズ感にまず笑ってしまう。流れる水洗音もリアルそのもの。私など酔っ払って間違って使ってしまったほどである。嘘である。メンバーは順番にうんこを流すバーをぐいっとするが,ランダムでウォシュレットのように飛び出してきたお水が顔にピシャー。かけられたメンバーが負けというゲーム。最初はあんなに嫌がっていたのに,水がかかった子がうらやましくなってきて,そのうちかからないと何にも面白くなくなってくるからこれまた不思議。

『うんとちん』(lv99)

最近,私の相談室で行っている子どものグループ「ほっとクラブ」注3)で大人気なのが,『うんとちん』(lv99)。これはカードゲームだが,「うんにちん」とくればもう最強でしょう。普段は禁止されている,「うんこ」「ちんちん」を言いたいだけ言える,むしろたくさん言わなければ勝てないという倒錯した世界。それを言うたびに開放感と恍惚感にどっぷりと浸ることができる。子どもに喜びと幸せを運ぶそよ風のようなゲームである。

注3)ほっとクラブは,2000年から継続的に行ってきたコミュニケーションの苦手な子ども達のためのグループ活動の場である。かつては,発達障害を抱える子ども達が多かったが,今は不安症や場面緘黙を克服した子ども,不登校や知的ギフテッドの子どもたちも多く在籍している。リラクセーションやマインドフルネスのワークと共に毎回ボードゲームで遊んでいる。http://hotcounseling.g1.xrea.com/index.php/hotclub/

『うんこっていいたい』(たのしいミュージアム),『第76回全国放屁大会』(アヂサワゲーム)

下ネタカードゲームやボードゲームはたくさんありすぎて紹介しきれないが,最近の秀作を2つ。『うんこっていいたい』(たのしいミュージアム)。このゲームは『うんとちん』とは真逆。うんこって言いたくて仕方がないという私達の本能とさがを逆手に取り,うんこって言えない不満に耐え抜いた者が勝者となる。『第76回全国放屁大会』(アヂサワゲーム)は,漏らすことなく長い屁ができるかを競うゲーム。「出そう」になったら,高らかにそれを宣言しいざ披露。ミが出たと判定される屁をするとその時点で即失格となる。イラストも含めてこの馬鹿馬鹿しさにはかなり痺れる。この二つとも,子ども達の衝動を抑え,耐性を高めることに,もしかしてひょっとするとつながるやもしれない。

『MAD CHILD』(φゲームズ)

そんな中でも,筆者の一番のお気に入りはなんといってもこれ。『MAD CHILD』(φゲームズ)注4)。これは,ボブとジョニーがうんこをぶつけあったり,「相手のお宝フィギュアをうんこに刺す」などの必殺技マッドアタックで,敵の戦意を喪失させる精神攻撃を繰り出したりしながら,死闘を繰り広げる抱腹絶倒の2人用対戦カードゲームなのだー!! むっちゃ楽しい-!! イェーイ!!

あれ,私,もしかして疲れてる?

注4)φゲームズ 宇賀神雅史氏考案の「コンポジションカードデッキ(※実用新案登録済)」という独自システムによって生まれた「爆笑リアクションゲーム」シリーズの第5弾である。一連の前作『アタックメン』『クレイジー・ウィザード』『シュリケンニンジャ』『真説・利休と秀吉』はすべて秀逸。もちろん筆者はすべて所持しているが同人ゲームのため現在入手できるかは分からない。

バナー画像:kerutによるPixabayからの画像

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丹 明彦(たん・あきひこ)
すぎなみ心理発達研究センターほっとカウンセリングサポート代表
資格:公認心理師,臨床心理士
主な著訳書:『場面緘黙の子どものアセスメントと支援──心理師・教師・保護者のためのガイドブック』(訳,遠見書房,2019),『プレイセラピー入門──未来へと希望をつなぐアプローチ』(遠見書房,2019)

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