岩滿優美(北里大学)
シンリンラボ 第15号(2024年6月号)
Clinical Psychology Laboratory, No.15 (2024, Jun.)
がん患者は病気や治療に対する辛さ,生活の変化に対する不安,死への恐怖,先の見通しが立たない不確実性など,さまざまな心理的ストレスを抱えている。しかし,このような心理的ストレスを抱えたがん患者が心理支援にアクセスできるとは限らない。このようながん患者の心理的ストレスの緩和に向けた心理支援を実施する際には,がん患者のライフステージを考慮する必要もある。各ライフステージにおいて,就学,就職,結婚,出産,子育て,介護,退職など体験するライフイベントも異なり,また発達課題も異なる。そのため,これらを踏まえて心理支援を実施することが望ましい。
そこで本特集では,最初にがん医療・緩和医療の歴史の紹介やがん患者が支援を受けることの重要性(どんな時に,どこで利用できるか,誰が提供できるか,精神疾患の有病率など)について説明し,次にがん患者の気もちのつらさについて(臨床経過との関係,治療との関係,心理特性との関係),さらにがん患者への心理支援について(支持的精神療法を中心に)説明する。そのうえで,小児期,思春期・若年成人(AYA世代),中年期,高齢期における各ライフステージに生じる心の変化や問題点,がん罹患に伴う気もちのつらさなどを説明し,各ライフステージの特徴を踏まえた支援や留意点について紹介する。ライフステージに沿って紹介することによって,がん患者の気もちのつらさと一言で言っても,その発達段階でその内容は異なることを理解することができる。本特集が,がん患者に寄り添い,支援を行う際の参考になることを期待している。
バナー画像:Davie BickerによるPixabayからの画像
岩滿優美(いわみつ・ゆうみ)
北里大学大学院医療系研究科 医療心理学
資格:公認心理師,臨床心理士