【書評特集 My Best 2023】|読者アンケートより


シンリンラボ 第9号(2023年12月号)
Clinical Psychology Laboratory, No.9 (2023, Dec.)

シンリンラボ読者アンケートより,皆さまのおすすめ本とコメントを掲載します。


鷲田清一『「待つ」ということ』(KADOKAWA,2006)

あらゆることを待てなくなった現代人,待つことについて問われ続ける支援者にとって,「待つ」について考える題材となり,内省できる一冊です。(江口毅)


最相葉月『中井久夫 人と仕事』(みすず書房,2023)

中井久夫先生の業績が,丁寧にたどられている。(三島一郎)


佐治守夫・岡村 達也・保坂 亨『カウンセリングを学ぶ―理論・体験・実習 第2版』(東京大学出版会,2007)

自分が最初に手に取ったカウンセリングの本であり(授業の教科書だった),学生時代に繰り返し読んだ本だったので,てっきり他大学の臨床心理学徒たちも,当然みんなこの本を読んでいると思っていた。しかし,現場に出て他大学出身の人と話したときに,この本を読んでいなかったり,(人によってはこの本の著者らの名前も!)知らなかったりする人と会い,衝撃を受けた。もちろん,相手の必読文献を私が読んでいない,著者名すら知らないということもあったのだけれど。

あ,「一言コメント」だった,すみません。

学生時代繰り返し読み,仕事して10年目までは毎年必ず再読していた1冊です。最近,若いシンリシたちとも交流することが増えたので,いつか「オススメの本はありますか?」と聞かれたら,この本を紹介しようと思っています(まだ,そのチャンスは来ていないけどー)。この第2版が出たときに,本書の英題が『Becoming a Counselor』だと気づき,著者たちの思いの深さに震えました。「カウンセリング再入門」に,ぜひ!(焼魚定食)


成瀬悟策『動作療法の展開─こころとからだの調和と活かし方』(誠信書房,2014)

成瀬先生が実践・研究してきた,様々な心理療法から動作療法に至るプロセス,そして動作療法の全てを余すところなく網羅した集大成とも言える本です。(たじろー)


アーサー・ケストラー(著),村上陽一郎(訳)『偶然の本質―パラサイコロジーを訪ねて』(筑摩書房,2006)

科学的とはどういうことか? を考えさせられた本です。わくわくします。(みち)


竹内健児『Q&Aで学ぶ 心理療法の考え方・進め方』(創元社,2015)

現場に入る新米カウンセラー必見の書。Q&A形式なので,気になるところをピンポイントでサッと読める優れもの。(双獅子泰子(そうじし・たいこ))


宮岡 等(編集代表),淀川 亮・田中克俊・鎌田直樹・三木明子(編)『職場のメンタルヘルスケア入門』(医学書院,2023)

現場ですぐ役立つ本にしました。(宮岡等)


野村俊明『刑務所の精神科医―治療と刑罰のあいだで考えたこと』(みすず書房,2021)

司法矯正領域で精神科医をしていた筆者が,静かで公平な眼差しをもって,医療少年院や拘置所や刑務所の世界を描いたエッセイ。(大塚斉)


神田橋條治(著),かしまえりこ(編著)『神田橋條治 スクールカウンセラーへの助言100』(創元社,2021)

スクールカウンセラーの実状や現場でのリアルがやさしい言葉で紡がれている。(匿名)


アラン・N・ショア(著),小林隆児(訳)『右脳精神療法―情動関係がもたらすアタッチメントの再確立』(岩崎学術出版社,2022)

サイコセラピーの核心が,情動関係がもたらすアタッチメントの再確立であることを明らかにする。精神分析と脳科学からこころの成り立ちを解明する革新的な著作である。(佐川眞太郎)


八巻 秀『「かかわり」の心理臨床─催眠臨床・家族療法・ブリーフセラピーにおける関係性』(遠見書房,2023)

著者の臨床記録から,どんなアプローチであっても,この視点は大事だというところが見えて来て,普段の生活へ応用できることがたくさんありました。(mai)


田中 究『心理支援のための臨床コラボレーション入門─システムズアプローチ、ナラティヴ・セラピー、ブリーフセラピーの基礎』(遠見書房,2021)

社会構成主義であってもその思想を臨床に活かす姿勢に慎重さがあることに好感が持てた。一歩間違えると理想論に陥りやすいブリーフやナラティヴの方法論をよりリアルに即した実践に落とし込むために大切なことを教えてくれる。またとてもわかりやすく解説してくれている。(O’Moja)


バナー画像:Alex G. RamosによるPixabayからの画像

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「シンリンラボ」編集部です。遠見書房内にあります。

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