voice 2 こころの病気予防を目指して│渡邉恵里・山﨑篤

渡邉恵里|こころの病気予防を目指して

私は医学部生時代に,精神科での臨床実習を通して,心の病気を予防するには小児期へのアプローチが必要だと思ったことから,研修医終了後は小児科医として心身症や発達障害の児童の治療に携わった。
感染症や喘息といった一般診療の中で,こころの問題の存在に気づき介入したり,虐待のリスクがある家族を発見し,行政や学校などと連携をとって家族に必要な支援体制を整えたりと,小児科診療の中でこころの病気予防をする機会は沢山あった。

しかしパーソナリティ発達の停滞を背景としたこころの病気の治療や,世代間連鎖の問題を抱えた養育者に対峙する中で,小児科医では限界を感じた。

そこで精神療法を学ぶため,自分自身の子育てを機に大学を離れ,精神科クリニック川谷医院での勤務を開始した。
さらに2020年より,川谷医院の系列である株式会社ドンマイの取締役として,福祉事業でのスタッフ支援と運営に関わるようになった。

ドンマイは支援対象者とその人に関わるすべての人が「あなたらしく生き生きと」生活できる支援をスローガンとした会社である。
ドンマイでは社長であり精神分析医である川谷が,精神分析的視点を用いた支援をスタッフに教育し,福祉の場で実践している。

現在,就労継続支援A型事業所とカフェ,放課後等デイサービス,相談支援事業所,就労定着支援事業所,訪問看護ステーション,ヘルパーステーション,シェアハウスを運営している。

さらに私は2023年5月より,こころの病気を予防することを目的とした合同会社ゼロトイチカラを創業した。
小児科と精神科臨床での学びを元に,子どものこころの発達を促す環境づくりをわかりやすく伝えながら,本来その家族にある力を引き出し,親がその子の専門家となることを支える親向けのオンラインサロン「子どものこころ専門医と考える能動的な子育てコミュニティ」,専門家を招いたセミナーなどを事業の中心としている。

2023年7月8日にハイブリッド形式で開催される「第1回子どものこころ専門医と考える能動的な子育てセミナー」は,子どもの健康さの証である「遊び」をテーマにし,精神分析的精神療法家である山﨑篤先生をゲストに迎えることにした。

外来に来る「遊べない子」が何を失っているのかを明らかにし,令和時代ならではの遊びの工夫を見つけるセミナーにする予定である。

子育てに悩む親だけでなく,子どものこころの発達を支えるすべての職種の方々に有益な時間を提供したい。

こころの病気予防が必要な人に届くようにと医療現場を離れた試みは,今スタートしたばかりである。
この先どうなるかわからないが,私自身が能動的に活動し続けたい。

セミナーおよびオンラインサロンの詳細はこちらまで

第1回子どものこころ専門医と考える能動的な子育てセミナー:令和時代の創造的な遊び

子どものこころ専門医と考える能動的な子育てコミュニティ


山﨑篤|私こと

私ことこの度,遠見書房さんから『みんなの精神分析』なる本を出版させて頂きました。訳あって大学を離れ,先祖伝来の家業であるところの農業にも勤しんでおります。(「昼日中には草刈りはしない」と師匠(母)に言われましたので,その合間に本稿を書いております)

いや~イイすよ,アグリ。ジトジトねっとりと密室の中で,寝椅子やらを使ってやっているアレと比べたら,汗はかくものの風はさわやか鳥のさえずりピーヒョロロ♪ 草を刈るにもザックザク!「ボクの後に道は出来る」だなんてあたかも光太郎先生の如し!(ただ,不慣れで指に「キて」マス。タイピングミス続出でウーてな状態ではある)その先祖伝来の農地を使って,渡邊先生のところのドンマイの利用者さんたちとイモを植え,秋には「ドンマイモ」! として出荷する予定です。もち米使って「オーこわ!」とかも。

当方,今まで一冊も単行本を書いてないので無名ですが,フリーランスの精神分析的精神療法家を営んでおります。オクスリが必要な方とは,腕のイイ管理医と手を組んで。まだ心理士の養成校もなかった時代(臨床心理士試験第1回生でアール)から臨床に携わり,このエキサイティングで時としてデンジャラスな仕事に邁進してまいりました。ひょんなことから子どもにも関心を持ち,児童分析というよりはプレイセラピーにハマっていった男です。

何故に児童分析ではないのだ? と,アンナ・フロイト先生やクライン先生には怒られそうではありますものの,以下の事情により,児童分析以外にも遊ぶことを通して子どもが元気になる仕組みについて知ってしまったのでした。ので,現在あちこちで言いふらかしております。

では,その事情とは? とある短大の保育者養成コースに就職してしまったから,でした。このコースでは,子ども達がどう発達するのか,保育者としてそれをどう支援するのか,どうやったら元気になるのかについて,あれやこれやと教えます。転移がどうたらこうたら以外にも,意外に,どころかたくさんあるんです。それが。(お知りになりたい方は,「保育所保育指針解説書 平成30年度改訂版」をどうぞ! 厚労省のHPにタダで置いてありますよ)

学生さんたちは年に5回実習に向かわれますが,彼や彼女たちの実習先に行って,「うむ。上手くいっているかね?」と指導するお仕事もある。25年もやっておると,計算できないほどの子どもと大人の交流を目撃したことになりますな。そこでエビデンスも集めましたので,ね。せっかくなので,本まで書いてお披露目しようと相成ったわけです。

ゼヒお買い求め下さいね。渡邊先生の会にもおいでませー!

(本記事は,渡邉恵里先生・山﨑篤先生へのインタビューをもとにシンリンラボ編集部が構成したものです)

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渡邉 恵里(わたなべ・えり)
所属:川谷医院,株式会社ドンマイ,合同会社ゼロトイチカラ
資格:小児科専門医,子どものこころ専門医,小児神経専門医,小児精神神経学会認定医
著書:なぜ不登校児童に好きなことだけさせてはいけないのか(みんプロ出版,2022)

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山﨑 篤(やまさき・あつし)
やまさきファーム代表。
精神分析的精神療法家(JPS精神分析的精神療法家センター正会員)。
山﨑篤&グレイトフルゼットというバンドを率いて,ミュージシャンとしても活動中。
*アマゾンでダウンロードしてください。
では。先祖伝来の田畑へ。畔の草を刈りに行って参ります。ドンマイモ植えた!

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