【特集 グループ・アプローチの魅力】#02 長期継続型サポート・グループ:月曜会|高松 里

高松 里(NPOライフストーリー・バンク)
シンリンラボ 第7号(2023年10月号)
Clinical Psychology Laboratory, No.7 (2023, Oct.)

1.はじめに

「月曜会」はその名の通り,毎週月曜日の夜に開催される,2時間の小グループです。私が大学院修士1年生だった1982年5月にスタートし,実に41年以上続いてきました。雨の日も風の日も,お盆でも大晦日・元日でも,月曜日であるならば原則開かれています。毎週,しかも年中無休というグループは,他にはあまり見たことがありません。

本論は,月曜会がどのような目的で開始され,その後どういう展開を辿り現在にいたるのかを紹介するものです。また,このような長期継続型サポート・グループの意味とは何かを考えて行きたいと思います。

2.グループ構造

まず簡単にグループを紹介します。
①日時:毎週月曜日,19:00~21:00,ほぼ無休
②会場:福岡市中心部のマンション(高松が仕事用に購入)。新型コロナ感染症流行以降は,オンラインに移行し,現在はハイブリッド形式。ビデオ・音声は常にonで参加。
③メンバー:参加者数は毎回6~9人程度。男女はほぼ半々で平均年齢は60歳前後と高い。オンラインが可能になったため,遠隔地にいた旧メンバーが参加できるようになった。新規メンバー募集はしないが,希望があれば若干名受け入れている。
④スケジュール:19:00開始,19:00~20:00「近況報告」,20:00~20:30「ディスカッション」,20:30~21:00「一言コーナー」。定時に終了し,延長はない。
⑤ファシリテーター:筆者(高松)が毎回担当。ZOOMも毎週設定する。
⑥参加費:オンラインになる前は500円(会場費+茶菓代)だったが,オンラインになり無料となった。
⑦雰囲気:話したい人が順番に話す。ごく些細な,日々起きたことを話すことが多い。長く知り合っているメンバーのため,質問などは自由に随時なされる。

3.発足当時の状況

発端は「エンカウンター・グループ」です。1970年ころ日本に紹介されたのですが,集団に埋没し,規範に従って生きることが普通だった時代に,「他人のことはともかく,個人としてのあなたはどうなのか」と,一人一人それぞれ違う生き方を模索しました。1980年代には多くの人を惹きつけましたし,私も最初はメンバーとして,後にはファシリテーターとして積極的に参加するようになりました。

ただ,エンカウンター・グループは,日本では当時,4泊5日くらいの合宿が標準と考えられ,会場も人里離れた「文化的孤島」が選ばれました。参加費交通費を考えると,かなり贅沢と言えます。それでもグループには全国各地から多くの人が参加していました。

私は,1982年4月に九州大学の大学院生となりましたが,学生はみんな貧乏で,当然ながら遠方のエンカウンター・グループに参加することは難しい状況でした。そこで,「生活に近いところでエンカウンター・グループはできないだろうか」というのが最初考えたアイディアです。ですので,当初「Weekly Encounter Group」と呼んでいました。

福岡では,当時すでに村山正治先生を中心に,「福岡人間関係研究会」が活動をしていました。1970年にエンカウンター・グループが日本に紹介される以前から,新しいグループの模索がされていました。さまざまなテーマで開催されていた月例会でしたが,徐々に,話題を定めないエンカウンター・グループ的な対話の形が定着していきます。

私も,大学院生になる前(研究生時代)からこのグループに参加していました。ただ,参加者の年齢がやや高く,私はほとんど最年少でした。

そこで,自分と同じくらいの年齢の人たちで,気楽に安価に集まれる日常的なグループができないかと考えました。私は,学部は北海道大学卒業で,1981年4月に研究生として九州大学にやってきました。福岡に知り合いは全くいない,という状況でした。大学院に入学したとき,「友達や仲間が欲しい」という気持ちは強くありました。また,九州大学大学院教育学研究科は,カウンセリングの研究・実践では日本でトップクラスでした。他大学から多くの受験生(研究生=大学院浪人生)が集まり,入学を目指していました。今とは違い,入学定員がごく限られていたため,数年間浪人することが当たり前で,途中で受験を諦める人も多くいました。厳しい時代でした。ですので,後輩の研究生の応援をしたいという気持ちも強くありました。実際,グループには,学部生や大学院生に加えて,外部から来た研究生が多く参加しました。

1982年4月に村山先生の学部授業で,「新しいグループを作りたい」と話し,集まってくれた10数人の学生とともに,2つのグループを開始しました。もう一つ,双子グループの「土曜会」も発足しましたが,このグループは途中から入ってきたある攻撃的な言動をする中年男性の影響で,1年程度で解散しました。月曜会はその方の退会を促し,その後も継続されました。

まとめますと,月曜会を始めた目的は,
①日常生活に近い場所で継続的なエンカウンター・グループを試みたい
②私自身が友達を作りたかった
③大学院受験をする後輩を応援したい

ということになります。

4.その後の経過

土曜会を維持できなかったことは,とても残念なことでした。土曜会は,大学周辺で開催されていたため,若い大学生が多く参加し,孤独な大学院受験生もたくさんいました。終了後には飲みに行ったりメンバーの家に遊びに行ったりしました。仲間は徐々に増えていき,月曜会・土曜会の周りには緩やかで比較的大きなコミュニティが形成されていました。

しかし,土曜会の解散により,大学周辺の人間関係はあっという間になくなってしまいました。グループをどう守るのかについていろいろと考えました。その結果,随分後になりますが,グループのマニュアル本(高松,2004/2021)の出版に繋がります。

月曜会は,大学周辺から離れて市内中心部に移動し,そのため社会人メンバーが増えていきました。その後,メンバーの増減はありますが,一貫して,月曜日の夕方に必ず開かれる,という形を守っています。当初,18:00開始,21:00終了という3時間グループでしたが,メンバーがだんだん忙しくなり,18:00にはとても集まれないということで,現在は19:00開始の2時間グループとなっています。

2020年の新型コロナ感染症の影響を受け,1カ月間グループを閉じましたが,その後ZOOMを利用してオンライングループに移行しました。オンラインになって驚いたことは,福岡を離れていた旧メンバーが再び参加を始めたことです。発足当初のメンバーが数人戻ってきて,古い話もできるようになりました。なにより,長い人生を共有してきた人たちとつながり続けるということは,オンラインでなければ不可能です。意外な効用がありました。

5.月曜会とは何か?

毎週毎週グループを続けるのは大変だろうと思われるかもしれませんが,「月曜日の夜は月曜会」と決めてしまえば,全然苦になりません。私の日常生活にすっかり組み込まれています。今日はどんな話が出るかなと楽しみにしていたり,「あ,このことを次の月曜会で話そう」と思ったりします。

日常の中に,「真面目に話ができる場」が常にある,というのは良いことだと思います。気になっていることを話すと,応答が返ってきますので,それについてまた考えて次の週に話す,というような連続性も生まれます。一人が話す時間は5分とか10分でも,結構考えがまとまったりします。ちなみに今,私のテーマは,「2023年4月の定年退職後の生活がどんなものか」ということで,連続していろいろ語っています。

このようなグループの実践は他にあまり例がないため,グループを概念化をすることは案外難しいことです。私は専門がグループ・アプローチですので,「専門職ボランティア」としてグループを展開しているとも言えます。つまり,私はファシリテーターとしての仕事(スケジュールの管理,新しいメンバーの紹介,話したそうなメンバーへの声かけなど)はいつも意識しています。そういう意味では,「サポート・グループ」(当事者以外が設立するグループ)と言えます。また,同時に私自身のためにグループを開催しているという意味では「セルフヘルプ・グループ」(当事者のみで構成されるグループ)の一つだとも思えます。

実体としては,「サードプレイス」(Oldenburg, 1989)としての「飲み屋」(行くと誰か知り合いがいるし,新しく来た人とも仲良くなる)の機能を純化したものに近いかもしれません。家族と職場以外の場所で,気の置けない人たちと継続的に会って話をしたいという気持ちは,多くの人が持っていることでしょう。こういう場を持つことで,孤独も癒やせますし,参加者は日々自分がどんな経験をし,どういう課題を抱えているのかということを,少しずつ話す中で,理解できるようになります。

これを読んでいる心理臨床家の方は,ご自身のためのグループを作ってみませんか。オンラインが使える現在の環境であれば,はっきり言ってグループを作ることは実に簡単です。月曜会のようなグループは,構造は非常にシンプルで,誰にでも作れると言えます。私が書いたマニュアルもあります(高松,2021)。

我々臨床家は,人の話を聴くことには慣れていますが,意外と自分のことを話す機会を持っていません。自分のことを話したことがないので,話したら何が出てくるのか不安だ,という人もいらっしゃるでしょう。クライエントさんには話すことを促すけれど,自分は話せないというのも変な話ですよね。人はもっともっと話すべきです。

心理臨床家は,日々多くの人と深く接していますが,意外と自分は孤独なのではないでしょうか。自分自身を大切にすることは,良い臨床に繋がります。語る場を気軽に作ってみませんか,というお誘いでした。

文 献
  • Oldenburg, R.(1989)THE GREAT GOOD PLACE: Café, Coffee Shops, Bookstores, Bars, Hair Salons and Other Hangouts at the Heart of a Community. Da Capo Press. (忠平美幸訳(2013)サードプレイス―コミュニティの核になる「とびきり居心地よい場所」.みすず書房.)
  • 高松里(2004/2021)セルフヘルプ・グループとサポート・グループ実施ガイド.金剛出版.
+ 記事

高松里(たかまつ・さとし)
NPOライフストーリー・バンク(元九州大学留学生センター)
資格:臨床心理士・公認心理師
主な著書:『改訂増補セルフヘルプ・グループとサポート・グループ実施ガイド』(金剛出版,2021),『ライフストーリー・レビュー入門』(創元社,2015)
趣味:海外旅行(2022年にスペイン巡礼路800㎞を歩き終えた),四国遍路、自転車,ピアノ&ギター

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