白石雅一(宮城学院女子大学,子どもの療育相談室)
シンリンラボ 第36号(2026年3月号)
Clinical Psychology Laboratory, No.36 (2026, Mar.)
1.はじめに〜学校基本調査と特別支援学校と生徒〜
前回の連載にて,私は,小学一年生にとって「学校」は「モンスター」だと譬えました。今回は,その学校に「ゴースト(幽霊)」がいる! ということが判明して,大きな社会問題になったことから,話を始めます。
我が国の「学校」は,周知の通り,幼稚園に始まり,小学校,中学校,高等学校,短大,専門学校,大学,そして,特別支援学校というように子どもたちの成長段階に合わせて,設置されています。文部科学省は,ここでの学校数や在学者数,教職員の数,進学率等を毎年調査して,「学校基本調査」にまとめて公表し続けてきました。
この「学校基本調査」において,文部科学省は,特別支援学校に通う生徒を「18歳人口」に含めずに大学進学率を算出していたことが2025年12月1日に判明しました。
文部科学省は,従来,大学の入学者数を3年前の中学校の卒業者数で割って大学進学率を算出してきたのですが,その分母に特別支援学校中学部の卒業者数を含めていなかった,ということなのです。そして,さらには,高校進学率や就職率でも不適切な扱いがあったことを認めています。
要するに,特別支援学校に通う生徒たちは,国の教育制度や政策の根幹にあたる「基礎データ」から排除され,まさに「ゴースト」扱いにされてきた! のです。
この報道を受けて,国は,12月26日に文部科学大臣が謝罪会見を開き,特別支援学校の前身である養護学校時代から「大学に進学する生徒はいなかった」ので「慣例」として「数に入れない」不適切な対応を続けてしまったという主旨の釈明をしました。
時代は,養護学校の状況とは大きく変化しています。特別支援学校の生徒も「受験」を経て,いろいろな進学先や就労先を獲得しています。
事実,この原稿を書いている季節(1月〜3月)は,特別支援学校では「受験シーズン」の真っ最中に当たります。
受験生としての不安を抱え,進学後の夢を追い,受験勉強に耐え,家族や先生方の応援を励みに,日々,頑張っている「彼ら」を「見ていませんでした」「知りませんでした」では,済まされません!
今回は,この「受験」「進路」に苦悩するある青年への支援をお伝えします。
2.突然,暴れ出し,その後無気力に陥ったA君の事例
地域の中学校における特別支援学級に通うA君には,知的発達症(IDD)と自閉スペクトラム症(ASD)がありました。IDDのレベルは,軽度の状態にあり,よくおしゃべりもして,文字や文章の読み書きも年相応ではないものの,学習場面や日常生活での支障はありませんでした。こと数学に関しては,ASDのこだわり行動が反映されて「計算問題」と「プリント学習」には絶対の自信をもっていました。
このような状態でしたのでA君は,中学校の特別支援学級では自他共にリーダーとして認められて,安定して2年間を過ごしてきました。
ところが,彼が3年生に進級した途端,状態がガラッと変わり,表情が険しくなり,常にイライラした状態で,些細なことでも気にして怒り出し,大声をあげて暴れ,周囲の人に手を出して当たり散らすようになったのです。
A君はこれまで,通常学級に在籍する“同級生”の動向には敏感に反応してきました。自分が属する特別支援学級では流行っていなくても,通常学級でカードゲームが流行れば即,購入して,真似をしました。流行の筆箱やリュックのカバンも通常学級の生徒に合わせて,揃えてやってきました。従って,通常学級の生徒が3年生に進級した瞬間から「高校受験モード」に切り替わったことも,A君は全身で受け止めたのでしょう。
そして,担任の先生や家族から“自分の”「進学・進路先の選択肢」を知らされて,A君は危機感を抱いたのでしょう。
その選択肢とは,①特別支援学校の高等部を受験する,②高等支援学校を受験する,③県立・私立の高等学校を受験する,④中卒で一般就職する,⑤中卒で福祉的な就労(条件付きの特例)をする,であります。
弱冠14歳の彼に突きつけられた「受験」と「就労」の大きな壁でありました。彼は,これまで一度も経験したこともない“とんでもない!”壁に遭遇してしまったのです。
危機感を抱き,不安に苛まれ,自暴自棄になって暴れるのも,仕方ありません。でも,周囲はそのように理解してはくれませんで,彼の「荒れた行動」にのみ反応して,こともあろうに「そんな酷い態度じゃ,受験すら出来ないからね!」と彼を脅すのでした。
「だったら,何も考えなし,希望ももたない!」とばかりに,夏休み前,彼は無気力状態に陥っていきました。
ここで改めまして,「高等支援学校」について解説します。高等支援学校とは,高等部だけ独立させて設置している特別支援学校のことです。主な入学対象者は,軽度のIDDのある15歳以上の生徒になります。職業訓練や自立に向けた教育に特化していて,入学試験が課せられます。地域によっては「高等学園」という名称が用いられています。
3.A君の面談〜彼が打ち明けてくれたこと〜
A君は,特別支援学級の片隅に座り込んで,宙を眺めて過ごすようになりました。そして,「どうせ,オレなんか,ダメに決まってる」が口癖になって,先生方とのコミュニケーションもなくなりました。
そのA君の「気持ちを聴き出して,励まして欲しい」という学校からの依頼で,私が彼との面談にあたることになりました。
うなだれた表情で面談室にやって来たA君は,椅子に座るなり,テーブルに両肘をついて,頭を抱え下を向いたまま,黙り込んでいます。
その彼に,私は簡単に挨拶と自己紹介を済ませた後に「今日は,二人で“かるた遊び”をしないかい?」と言って,「おしごとかるた」(写真1)を出して,彼を誘いました。

写真1 おしごとかるた(金の星社刊)
「ちぇっ,ここでカルタかよ!」とA君は即座に反応して見せました。まさに,「何で?! ここでかるたなんだ!」という“驚きの反応”でした。実は,それが私の狙いでした。
つまり,拒否的な彼を「驚かせて」,次に「視線を変えさせて」,さらに「ゲーム(やりとり)に誘い込むこと」で,肯定的な彼に変えること,なのでした。
私は,「きみが初めて会う大人と向かい合って話すのは“イヤ”と思うだろうな,と考えて,かるたの絵でもあれば,少し心が和むかな? と思って,用意したの。だから,かるたを絶対にしたい! という訳じゃないんだ」と説明しました。するとA君は,「へぇ〜っ」という感じで,私の手元にある,おしごとかるたの箱を見てくれました。
そこを見逃さず,私が「A君,見てくれてありがとう! 嬉しいよ。ついでに,ここに,お仕事の絵カードを並べるから,見ていてくださいね」と言って,主要な絵カード(絵札)を上下二段にして並べていく(写真2)と,彼はその作業を見守りました。

写真2 おしごとかるたの概要
上段に17枚,17種の職業と,下段にも17枚,17種のお仕事の絵カードを並び終えて,私はA君に「A君は,上の段にある郵便局の仕事と,下の段にあるクリーニングの仕事を比べたら,どっちを仕事にしたいですか?」と尋ねました。
すると,A君は,「カルタじゃねぇのかよ!」という表情を見せました。しかし,それでも,頭を抱えていた両腕をテーブルに戻して,なおかつ,右手でもって,クリーニング職人のカードを指差して,「こっちかな?」と答えたのでした。私が「へぇ〜っ,クリーニングの仕事ねぇ,どうして?」と聞きますと,彼は「だって,先輩が働いている,って聞いたことがあるから」と説明してくれました。
次に私が「それでは,上の段のホテルの従業員の仕事と,下の段の落語家の仕事では,どっちがいいかな?」と聞きますと,彼は即座に「上のホテル!」と答え,自分から「これも聞いた話だけど,先輩がホテルで働いてる,って知っていたから」と話してくれました。
「じゃぁ,次の選択だけど,上の段の植木職人と下の段の寿司職人では,どっちがなりたい仕事かな?」と私が聞きますと,彼は迷わず「寿司職人!」と大きな声を出して言いました。そこで私が「もしかして,A君の先輩で,寿司職人になってお寿司を握っている人がいるの?」と驚いて尋ねますと,彼は「そんなのないよ! いないいない! お寿司は,ただ,オレが食べたかったから。毎日お寿司が食べられればいいなぁって,思ったからだよ。えへへっ」と言って笑いました。
そのような「お仕事の二択」でもって「楽しく会話」していきますと,最後には,(た)の「大工さん」と(ろ)の「ロボット製作者」の二つの職業が勝ち残り,最終選考に絞られました(写真3)。

写真3 おしごとかるたでの二択
私がA君に「さぁ,最後の選択です!A君は,最終的には“大工さん”になりたいのか,“ロボットを作る人”になりたいのか,判定をして下さい!」と求めますと,A君からは,意外な答えが返ってきたのでした。
それは,A君によると「オレ,大工さんがキレイにカンナで削った後の,削りカスが気になるの。そして,ロボットは,“お掃除ロボット”を作りたいなって思ってるの」ということでした。それを聞いて,私は「そうすると,A君は,“お掃除すること”にとても興味があるっていうことかな?」と念を押しますと,彼は大きく頷きながら「オレ,高等支援学校に行った先輩みたいに,“清掃の仕事の勉強”をして,卒業したら,“清掃の仕事”に就きたいんだ」と打ち明けてくれたのでした。この彼の正直な告白に接し,私は嬉しくて涙を抑えることが出来ませんでした。
4.「受験」までのあらましを“見える化”して伝える
A君は,IDDとASDの障害特性が影響して,抽象的で曖昧な話や説明にはついてこられない問題がありました。そこで私は,彼との会話にお仕事の絵カードを用いて,具体性をもたせました。その結果,A君は「お仕事選び」というゲームに乗ってきて,気を許し,私に「心の内」を打ち明けてくれました。
そのキーワードが「先輩」と「高等支援学校」と「清掃の仕事」であります。
特別支援学級におけるA君の担任の先生に聞いたところ,A君が中学1年生だった時の3年生の先輩が高等支援学校を受験して,合格し,現在「清掃の作業班で学んでいる」ことが分かりました。この先輩は,A君と親しい関係にあったようで,A君の「憧れ」にもなったようです。こうして,A君の中に,おぼろげながらも「先輩」→「高等支援学校」→「清掃の仕事」という,具体的なイメージが出来つつあったわけです。
ただし,それは,丁寧に引き出してあげないと,出て来るのが難しい,本音であるがゆえの繊細なものだったと思います。
さて,私は,A君に次のことを「紙に書いて」「見せながら」伝えました。まず,第一に,「県内の高等支援学校の入試日程」のあらましです。それは,年内の12月中に願書提出で年明けの1月中旬に入学試験がある,ということです。そして,第二に,近日中にA君と家族とでお目当ての高等支援学校に実際に行ってみて,見学してくることを勧めました。第三にその際,交通網や通学時間を調べてくることも伝えました。それから,第四として,学校見学のおりに「入試の過去問」をもらってくることも助言しました。さらに,第五としては,秋口に高等支援学校の「学園祭」を兼ねた「見学会」があるので,是非ともそれに参加して,学校の雰囲気や作業内容の確認をしてくるようにも勧めました。
A君は,私の「具体的な提案」を真剣な眼差しで受け止めてくれました。そして,いつしか,「オレが……」という口調から,「ボクが調べればいいんですね」というような丁寧語を使う態度に変化していました。
なお,私は,以上のように彼に書き示したアドバイスを学校の事務室にて複写して,A君の担任の先生と保護者にも渡して,「提案の二から五まで,必ずA君に付き添って行ってあげてください」と念を押しました。
最後に,私は,高等支援学校を受験するための「勉強方法」について,説明し,A君に確認をしました。
通常,高等支援学校の受験科目は,①学力試験,②作業能力試験,③運動能力検査,④面接,⑤その他,となります。この科目数は都道府県で異なりますが,どの都道府県でも一致しているのが,②の「作業能力試験」が重要視されることです。これは,「作業能力や態度を磨き,就労と自立を目指す」ことを目標に掲げる高等支援学校の本筋でありましょう。
従って,②の作業能力試験の対策は,「次回,改めて,白石と一緒に学びましょう!」と約束をしました。
さらに,①については,「A君は,数学が好きで,プリント学習も得意だと聞いているので,中学の全科(主要5科目)のドリル式問題集を一冊買って,国語5問解いたら数学1問解く,社会5問解いたら数学1問解く,理科5問解いたら数学1問解く,英語5問解いたら数学1問解く,というパターンの繰り返しで,毎日,2時間は,勉強しなさい」と指示しました。要するに,“嫌いな科目”を解いたご褒美に“好きな数学”が解ける,という仕組みにしたのです。
この日は,中学校が夏休みに入る前の7月中旬でした。私は,ドリル学習を「夏休みの宿題」に設定して,「夏休み明けの8月下旬に“作業能力試験の対策”をしましょう」と約束して,この日の面談を終えました。
5.高等支援学校の受験勉強の要:作業能力試験の対策(模擬試験)
夏休みが明けた8月の下旬に,私とA君は面談室で再会しました。この日は,事前に申し合わせておいて,「作業能力試験の模擬試験」を行うことになっていました。よって,我々は,試験当日を想定して,A君は制服,私は紺色のスーツ姿で臨むことにしてあります。
嬉しいことに,A君と両親は揃って,私との面談の翌日には志望する高等支援学校に赴いて,交通網や通学時間を調べ,過去問も手に入れて,イメージトレーニングや過去問の分析等を行っていたのでした。
A君は,早速,自信満々な態度で私に「宿題」のドリルを手渡してくれました。即刻,それを捲ってみますと,ほぼ,全ページが解答で埋まっているではありませんか!「おぉっ! すごい! キチンと宿題,やってきたね!」と私は唸って「えらかったね!」と彼を誉めました。ちなみに,後日談ではありますが,かなりの問題数は,両親が手伝った,ということでしたが。それでも両親は,「Aが立ち直ってくれて,目標をもって課題に取り組んでくれている姿を見ることが出来て,本当に嬉しいですし,心から感謝しています」と喜んでいました。
そして,私が「彼との約束」を果たす番です。私は,高等支援学校の入試担当教官を“演じて”控え室にて,緊張の面持ちでいるA君に「本日の作業能力試験」で「気をつけること」を次のように伝えました。
①試験会場に入る時には,大きな声で「よろしくお願いします」と挨拶すること
②会場では,試験の説明をする教官の話をよく聞くこと
③分からないことがあった時は,手を挙げて「質問があります」と言って質問すること
その後,私はA君より先に,“模擬試験会場”に移動して,A君の入室を待ちました。
A君は,私のアドバイスを守って,「失礼します。◯◯です。よろしくお願いします」と挨拶して,入室しました。その彼に,私は,以下のように教示して,試験を進めました。
「それでは,作業能力試験を始めます。これから話す内容をよく守って,作業を始めて下さい」
①試験で配られる「作業指示書」をよく読んでから,指示書に従って作業を行うこと
②「作業指示書」を読んで分からないことがあったら,「ここが分かりません。教えて下さい」と言って質問をすること
③試験時間は,30分間で,試験時間内に全作業を終えること。時間内に作業が終わらなかったら,減点となるので,気をつけること
A君は,ここでも,先に行った(控え室での)「アドバイス」を遵守して,真剣に教官の説明を聞いているのでした。
「試験,始め!」(私の合図)
さぁ,高等支援学校の受験の要である,「作業能力試験」の始まりです。私が用意したその内容は,次の通りです。
写真4をご覧ください。ここから用いるおもちゃ教材は,今回も“オールDAISO商品”です。

写真4 作業能力試験(模擬試験)での道具説明
丸い穴がパンチングされているデザインボードのその穴を利用して,そこに木製のダボを打ち込んでいきます。その際,ゴム製のハンマーを用います。ハンマーで釘を打ち込む要領で,ダボを一通り打ち込み終えたら,その並び立ったダボに,ソフトガン用に売られている吸盤タイプの矢(吸盤の反対側のお尻に穴が空いている:写真5参照)を一本ずつ,挿し込んでいきます。この矢は,1袋15本セットなので,1袋分,15本を挿し終えたらそれで終了となりますが,ダボがキチンと打ち込まれていないとグラついたり,外れたりするので,「検品」をして作業の質を確認することまでを行い,自己チェックして,作業能力試験を終えることになります。

写真5 ソフトガンと矢(穴あき)
以下が,A君に提示した実際の「作業指示書」です。




図 「作業指示書」一覧(クリックして拡大してご覧ください)
6.自信をもって本番の受験に臨み,合格!そして事例のまとめ
A君は,作業能力試験の模擬試験を一人の力で,指示書通りに遂行して,自己チェックの☑も検品作業も忘れずに執り行って,終了することが出来ました。
私が教官としてA君を評価した点検表は,以下の通りです。
①挨拶が出来たか……☑
②教官の教示を聞いて理解出来たか……☑
③指示書を読んで理解出来たか……☑
④指示書に沿って作業を行えたか……☑
⑤作業遂行過程で作業を自分でチェック出来たか……☑
⑥目標に向けて課題遂行が出来たか……☑
⑦道具を適切に使用出来たか……☑
⑧最後までやり抜くことが出来たか……☑
⑩検品を行えたか……☑
⑪「時間」を意識出来たか……☒
⑫「おわり」を報告出来たか……☑
以上,A君は,12のチェックポイントのうち,⑪が「不合格」となりました。ただ,作業に集中するあまり,「時間」を一切気にせず,壁掛け時計も腕時計も見なかった,という点が反省材料でした。それでも,所要時間は25分で制限の30分間には収まっていましたので,結果はオーライですが。
この評価点を基にして,A君に「見事合格です!」と告げますと,A君はやっと表情を和ませて,「ありがとうございました。ここでの自信を励みにして,本番も頑張ります!」と決意を新たにしたのでした。
これ以降,A君は,両親と担任の先生いわく,「人が変わったかのように大きく成長して,受験勉強のみならず,学校の授業や生活にも真摯に取り組むようになって,他の生徒の模範にまでなりました」ということでした。
そして,A君は,年明けに志望していた高等支援学校の受験を終え,翌月には「合格」の通知をもらい,その足で,私に報告に来てくれました。その時に彼が言った言葉が,私の胸に刺さりました。「これでボクも後輩のいい見本になることが出来ました!」
IDDや発達障害のある子どもたちは,進学や就労等の進路選択において,「絶対的な弱者」であります。そもそも,進路選択を任された経験がなく,その仕方も知らない者が圧倒的に多いのです。要は,みな,「周囲の大人が決めてしまう」し「他人に決められてきた」からであります。
それでも,子どもたちは,「先輩」を見ています。時に「憧れ」ています。「同じように進みたい」とも思っています。
しかし,周囲の大人は,嫌みを言うだけで,具体的な実のある支援はしてくれません。「先輩」のように「輝きたくても」,その術を誰も具体的に教えてくれません。何もかもが「五里霧中」で,先に進むことが出来ません。
そんな状況と心境に,A君は落ち込んでいたのでしょう。
その彼に,私は,次のようなアプローチをしました。
①「清掃の勉強をしている先輩のように高等支援学校に行きたい」という気持ちを引き出した
②高等支援学校の受験のあらましを教え,見通しをもたせた
③高等支援学校の受験の対策を具体的に教えた
④高等支援学校の受験での評価のポイントを教えて留意させた
⑤高等支援学校の受験の要である作業能力試験を模擬試験で乗り越えさせて,大きな自信を得させた
「受験」や「進路選択」は,「人間関係の構築の場」であり,「人を育てる絶好の機会」でもあります。私も心理職の「後輩」に向けて,本稿を残します。
白石雅一(しらいし・まさかず)
宮城学院女子大学,子どもの療育相談室
資格:臨床心理士,公認心理師,介護福祉士
療育のためのおもちゃ教材の開発に心血を注ぐ。メーカーに意見したくて懸賞論文に応募して,表彰式で社長に提言した(リカちゃん人形で有名なタカラの当時の社長さん)。
新著に『おもちゃ教材で育む人間関係と自閉スペクトラム症の療育』(東京書籍,2024)がある。






