松丸未来(東京認知行動療法センター)
シンリンラボ 第35号(2026年2月号)
Clinical Psychology Laboratory, No.35 (2026, Feb.)
20数年前,臨床心理士になりたての私は,米国スクールカウンセリングのナショナルスタンダードの知識と,修論でテーマにしたいじめの未然防止としてのピアサポートプログラムと,行動療法の知識くらいの手札しか持たずに,SCを初めて受け入れる小学校2校と中学校1校に配置された。今でこそ「チーム学校」として,SCも一員として認められているが,当初はSCに何ができるのかお互いに未体験で,開拓していかなければならなかった。毎回,帰り道には一人反省会をしていたことをよく覚えている。
当時,SCのための研修会で,「SCは黒子である」という言葉をよく聞いた。黒子とは,学校という舞台の主役は子どもと先生なので,SC は子どもの行動の背後にある気持ちや機能,関連する認知を理解して,伝える役割だということだった。別の言い方をすれば「橋渡し役」や「通訳」であり,コンサルテーションの技術が必要とされた。
しかし,コンサルテーションの訓練の場はなかったので,体験から学んだ。まず先生の話をよく聞くようにした。なぜなら,先生は教え上手なので,言い回しを学びながら,心理学の知見を交えて伝えるようにすれば理解し合えるのではと思ったからである。例えば,副校長先生が校内委員会で,「(ある生徒の問題には)自尊感情の低さが関係している」と発言した時には,「あのように少し専門用語を使って端的に言うとわかりやすい」と思った。しかし,具体的な手立てまでは提案されていなかったので,手立てを伝えられるのがSCの役割かもしれないと思った。委員会後,担任と話す時には,その子の強みを聞き,「そんなすごいところがあるんですね!」と,先生が別の見方ができればと思い,長所が目立つように相槌を打ち,その子どもの強みが生かされ自尊感情が高まるような工夫を提案した。
他にもわかりやすく伝える工夫としては,図示して説明している。例えば,友達関係の子どもの相談は登場人物がいつどこで何をしたのか複雑なので,相関図を書きながら,丁寧に聞き取る。そうすると子ども自身も状況を客観視することができて,一緒に手立てを考えることができる。子どもの許可を得て,その紙一枚で,どの先生とも同じ状況を共有することができるし,役割分担してチームで関わることもできる。図示と言えば,ケース・フォミュレーションと言われるものを作ることも多く,自分自身は認知行動療法や,行動療法が専門なので,その枠組みで子どもに何が起きているのかということを図示する。現在の悪循環に起因する子どもの素因や家族関係,過去の出来事を含めることも多い。特に使い勝手が良いと感じるのが,ケース検討の時である。保護者がいる場合や他の専門職が同席する場合など多様な人が集まる場で,SCの見立てを図一枚で説明ができて,それを踏まえて今後の対応を提案できる。口頭だけで伝えると流れしまうが,関係者で協議しやすく,役割分担してチームで関われるメリットが大きい。
最近では,子ども側に問題があるという見方よりも,環境側の何が壁になっているかという視点も大事にしている。周りに手が出てしまい,先生が困っているケースでは,困らせる子と思っている先生や周りの子どもの見方が壁となり,子どもは不安になり,緊張し,怒りが生じやすくなっていた。先生が認めていることを具体的に言葉にしてもらったり,支援員は「守ってくれる人」と伝えてもらったりすることで,子どもが少し安心し,怒りが収まることに役に立った。環境への働きかけが重要である。
SCだからこその説明や提案をこれからも工夫して,コンサルテーション力をブラッシュアップしたい。そして,何より,日々,頑張っている先生や保護者のエンパワメントと安心に役立つコンサルテーションをしたい。それが,子どもの幸せに寄与することを願う。
松丸 未来(まつまる・みき)
東京認知行動療法センター心理士,公立・私立・日本人学校などでスクールカウンセラーをし,難民支援協会などで心理支援もする。
資格:公認心理師・臨床心理士
趣味は,新聞を読む,スキー。
主な著書:『よくわかる学校で役立つ子どもの認知行動療法』(遠見書房,2023),監修に『子どもの認知行動療法 不安・心配にさよならしよう!』(ナツメ社,2022),「あんしんゲット!の絵本シリーズ」(ほるぷ出版,2021)など






