書評:『よくわかるACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)〈改訂第2版〉(上・下)』(ラス・ハリス 著/星和書店刊)|評者:松丸未来

松丸未来(東京都公立学校スクールカウンセラー)
シンリンラボ 第15号(2024年6月号)
Clinical Psychology Laboratory, No.15 (2024, Jun.)

1.「やってみたい」にさせる良書

アクセプタンス&コミットメント・セラピー(以下,ACT)のことは,一言で言えば,「人は不安,怒り,絶望などさまざまな気持ちを感じるが,気持ちと行動をうまく区別して,自分の価値に沿ってやりたいことをする」と理解をしていた。希望と勇気を与えてくれるアプローチとして,相談者にも自分にも取り入れたい方法であったが,理解するためには「心理的柔軟性」「価値」「文脈としての自己」など,日常ではまず使わない難語のオンパレードで近寄り難い印象があった。しかし,本書は憧れだったACTを使えるようになるかもしれない,「やってみたい」という思いにさせてくれる本だった。

2.一番ためになったこと

読み始めて,すぐ自分と相談者に取り入れたのが,「チョイスポイント」いうやり方である。例えば,「あ〜,本当にむしゃくしゃする。ブチ切れそう!」となる状況で,怒鳴り散らして,暴れて,多少スッキリすることはあると思う。でも,後で後悔,ダメ出し,罪悪感が押し寄せる。そのような気持ちがまたストレスになって,心が元気を失うパターンにはまる。それはわかるけどやめられない。それが自然な人間の姿である。

でも,ACTでは,そんな自然の成り行きの自分は自分として,本当はどうありたいか,何を大切にしたいかということをまず見つけようとする。「価値」を見つけるのである。さらには「価値」に沿った行動をとることを助けてくれるのもACTである。価値に沿った行動を具体的にするのが,「チョイスポイント」と呼ばれるやり方で,いつもの困る「状況や考えや気持ち」の時に,私たちには「逸れるムーブ」と「進ムーブ」といずれか選べる道がある。「逸れるムーブ」は,考えや気持ちに「釣られる」行動を取る道で,先の「怒鳴り散らして,暴れる」である。一方,「進ムーブ」は,怒りに関係する考えや気持ちを「はずす」行動を取る道である。「はずす」手段としては,例えば,自分を主語にし,思いを率直に伝えるIメッセージで伝えるといった顕在的行動以外に,怒りをコントロールせずただただ呼吸に注意を向けるといった「マインドフルネス」,「私は怒りを感じています」「責められている感じがする」などと気づきそのままにしておく「脱フュージョン」,「当然,怒りを感じるよね」「誰でも怒ることあるよね」と自分に優しい声をかけるといった「セルフ・コンパッション」など内面的な活動(潜在的行動)もある。顕在的な行動のレパートリーを増やしていくことはもちろんのこと,潜在的行動を強めていくことも目指す。凝り固まった心をしなやかにするストレッチのようである。これが,「心理的柔軟性」を高めるACTの中核的な理念である。

3.最後に一言

ACTの魅力を試食できたのではと思うので,フルコースはぜひ,本書で楽しんでいただきたい。著者のラス・ハリスRuss Harrisは,「ACTの6つのコア・プロセスの上でダンスをしましょう」と誘う。私はACTのダンスができるようになるために,もう一回本書を熟読したい。ACTダンスができるようになりたい方には,お勧めである。

松丸 未来(まつまる・みき)
所属:東京認知行動療法センター(スクールカウンセラー,ウクライナ避難者心理支援もしている)
資格:公認心理師・臨床心理士
主な著書:『よくわかる学校で役立つ子どもの認知行動療法』(遠見書房,2023),『思春期の心理を知ろう!心の不調の原因と自分でできる対処法』(監修,PHP研究所,2024),『子どもの自己肯定感を育てる100のレッスン』(ナツメ社,2023),『決定版 子どもと若者の認知行動療法』(翻訳,金剛出版,2022),『子どもの認知行動療法 怒り・イライラを自分でコントロールする』(監修,ナツメ出版,2022)など。

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