花井 博(みよし市教育センター「学びの森」専門相談員)
シンリンラボ 第35号(2026年2月号)
Clinical Psychology Laboratory, No.35 (2026, Feb.)
これからのスクールカウンセラーに必要なこと
今回,この稿を起こすにあたり,今までの私自身のスクールカウンセラー(以下,SC)としての活動を振り返り,これからのSCにとって何が必要だろう,子ども達にとって役に立つSCは何を備えているべきだろうと様々考えたが,最後,私の考えは非常にありきたりなところに落ち着いた。
それは,「SCと教職員が互いに理解し尊重しあい,チーム学校として支援を展開することができる力量」である。
SC側の視点を多めにして言い換えると,学校とは何か,教職員はそれぞれの教育活動の中で何をしているのかを理解した上で,チームとしての役割分担の中で「授業場面やクラス活動場面での支援は先生にお任せします。本人や保護者への臨床心理面談は私が引き受けます」と責任をもって自分が請け負うべき支援にあたることができるSC,とも言える。
SCが行ってきたこと,不十分だったこと
「黒船到来」と例えられたSCの配置から30年が経った。
その間,SCとは何をする人なのかということを,自分たちは学校にきちんと伝えていないのでは?という問いは度々あったし,そこがやはり心理職としては弱い点でもあった。そのため,私たちSCはそこに取り組んだし,学校側もSCの効果的な活用を模索した。
その一方で,【SC側が,学校とは何か,教職員の見方・感じ方・考え方を理解しようという点は,今一歩進んでいない】ように思う。学校はどのような組織構造を持っているのか,現在の学習指導要領はどのようになっておりどのような学習系統下で教育活動が行われているのか,自分自身の配置校ではどんな研究課題が取り組まれているのか,目の前の連携相手である教職員はどのような校務分掌で動いているのか,学級経営上の視点で見た時や指導要領に基づく評価観点に則って見る眼には子どもの姿はどう映るのかといった教育の視点をSCが理解することである。
SCとして勤務を始めた頃
私自身を振り返ってみると,面接技術・アセスメント技術に裏打ちされた心理援助を円滑に遂行できる力量,その獲得を目指して大学院での養成課程中はトレーニングに励んでいたつもりであったし,職を得てのちもその研鑽を変わらず続けていくものだと考えていた。
だが,学校という現場に入ってそれは支援の両輪のうちの片側であることを強く感じた。
SCという職を勤める中で,何人も尊敬できる方に出会った。研修会で出会う先輩SC以外にも,担任や養護教諭,管理職である校長,教育行政の立場から学校を支援する指導主事など,学校現場の中でも多く出会った。それらの人々は様々な立場であったが,共通点があった。それは,確かな専門性に裏打ちされた技術で支援に取り組んでいるということだけでなく,常にだれかと協力して支援を展開しているという点だった。協力者がどんな立場で何をする人かを理解し,どのような考えを持っているのか,得意なアプローチは何かなど,相手を尊重した上で円滑な協働を引き出しているということだった。
羅針盤となる著書・人との出会い
学校って何だろうという問いが自分の中で高まった時に,内田利広先生・内田純子先生の『スクールカウンセラーの第一歩』に出会った。その名通り,赴任校に初めてあいさつに行く場面などSCの第一歩から書かれている書籍である。私のSCとしての【第一歩】はとうに終わっている経験年数であったが,SCがこう動いたとしたら学校特有の制度や文化の中で動く教職員から見たらどう見えるかといった観点も書かれており,非常に勉強になった。学校という場での自身を客観視するためには,場である学校自体をより深く,より実践的に知らなくては,と改めて身に染みた。
ちょうどその時期,大山卓先生(2025年度現在は中部大学にて教鞭をとっておられる)が私が配置されていた学校のある市町の教育行政にSCを指導監督する立場で赴任された。大山先生からは巡回指導や困難ケースの指導助言を通じて,私の動きが学校という場においてどのように見え,どのように機能するかを教えていただいた。また,緊急の学校コミュニティに対する支援が必要になった際に,支援対象校の持つ特徴や地域内での当該校の立ち位置,そこで働く教職員がどのような思いで動いているかなども踏まえて緊急支援を展開し,その後も当該校にいて子どもたちへの支援を継続できる現場の教職員や配置SCに中長期を見据えた支援を緩やかに引き継いでいく様を目の当たりにした。学校現場の視点も持ちつつ,SCとして何をするべきかを考える手本を教えていただいた。
あらためて,これからのSCに必要なこと
これからのSCには「SCと教職員が互いに理解し尊重しあい,チーム学校として支援を展開することができる力量」が必要とされると考える。そのためには,私としてはSCとして学校をより良く理解しようとする努力を続けていきたいと考えている。
文 献
- 大山卓(2021)これ一冊でわかる「教育相談」―学校心理学と障害福祉の基礎.ジアース教育新社.(現在は2025年の改訂版が最新版)
- 大山卓・高村葉子編(2025)事例から学ぶ 小・中学校特別支援教育サポートブック.ジアース教育新社.
- 内田利広・内田純子(2011)スクールカウンセラーの第一歩―学校現場への入り方から面接実施までの手引き.創元社.(現在は2025年の改訂新装版が最新版)
花井 博(はない・ひろし)
みよし市教育センター「学びの森」専門相談員/半田市学校教育課スクールカウンセラースーパーヴァイザー
資格:公認心理師,臨床心理士
主な著書:「第12章 ゲーム依存の問題の理解と支援」In:『そもそも心理職は、何を目指してスキルアップすれば良いのか?』(分担執筆,遠見書房,2025)
趣味:ゲーム,車いじり,PCいじり






