【特集 時代・風土・心理:臨床に生きる描画法:バウムテストを巡って】#00 はじめに|坂中尚哉

坂中尚哉(香川大学)
シンリンラボ 第30号(2025年9月号)
Clinical Psychology Laboratory, No.30 (2025, Sep.)

我が国にバウムテストが導入されて60年の月日が経ち,今日,バウムテストは,広く心理臨床の場で用いられている。従来,バウムテストは,心理アセスメントの検査道具として使用されてきたことから,バウム画の客観的指標に基づいた心理学的理解が優勢であった。一方,近年はクライエントとセラピストとの関係をひらく治療媒体としてバウムテストを援用する事例報告が多数なされるようになってきた。その転機には,コッホKochの『バウムテスト[第3版]心理的見立ての補助手段としてのバウム画研究』(1957/2010,岸本寛史ら邦訳)の出版にあると考えている。また,岸本寛史らによる『臨床バウム』(2011)や『バウムテスト入門』(2014)では,バウム画の指標は何を物語ろうとしているのか,見守り手であるTh.は,描き手のバウム表現を共に眺めながら,クライエントはどのようにバウムを描こうとしているのか,その描画プロセスに主体的に関与し,そのありように関心を寄せる記述アプローチの重要性を指摘する。

本特集では,従来のバウムテストを再考しつつ,バウム画が映し出す時代性・風土性・心理面について6本の論考をお届けする。執筆者は,それぞれの臨床のフィールドにおいてバウムテストに関わってこられている研究者かつ実務家である。それぞれの論考を巡って,バウムテストの新たな世界に立ち会う場になることを期待したい。

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坂中尚哉(さかなか・なおや)
香川大学医学部臨床心理学科准教授
資格:臨床心理士・公認心理師,博士(学術)。

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