【特集 私の初回面接】#04 とあるブリーフセラピストの初回面接|佐藤宏平


佐藤宏平(山形大学)

シンリンラボ 第37号(2026年4月号)
Clinical Psychology Laboratory, No.37 (2026, Apr.) 

初回面接を行うにあたり私が考えたり行ったりしていることについて,あらためてふりかえる機会を頂いた。私のバックグラウンドは家族療法やブリーフセラピーであり,また日常的に大学の心理相談室やスクールカウンセリングにおいて,お子様の問題を主訴に来談される保護者面談を行うことが多いため,そのようなケースをイメージしながら書かせていただいた内容であることをご了承いただきたい。

1.初回面接以前のクライエントとの出会い──今ある限られた情報からのクライエントをイメージする

クライエントとの出会いは初回面接以前に始まる。大学の心理相談室などの面接では,初回面接以前に電話による面接の申し込みがあり,簡単な主訴や電話での様子などに関する受付メモにより予め情報が与えられることが多い。例えば,来談経緯として,自らインターネットで調べ来談に至るケースや,医療機関からの紹介,学校の先生からの紹介,すでに相談室において面談を受けているクライエントからの紹介等,さまざまな経緯で相談室に来談される。また子どもの問題行動を主訴としたケースでは,母親が申し込まれるケースがほとんどであるが,稀に父親が申し込まれるケースもある。この他,電話を受けた受付スタッフの電話口でのクライエントの印象についてのメモなどの情報が残されている場合もある。また,学校でのスクールカウンセリングにおいては,子どもの様子や状況,面談に至った経緯等についても,担任の先生や教育相談担当の先生からお話を伺えることも少なからずあるし,また教育相談関連の資料などから得られる情報もある。こうした情報は,限られた情報ではあるが,初回面接までの間にクライエント像や主訴に関与すると思われる背景や要因をイメージしたり,その後の面接頻度,面接にあたっての留意点,等についても想像したり思い巡らしたりする貴重な情報であり,初回面接前のクライエントの出会いでもある。

2.初回面接

初回面接では,以下のようなことに気を付けて面接を行っている。

1)クライエントを面談に温かく迎え入れること

初回面接に限らないことではあるが,面接室はクライエントにとって心地よい物理的空間である必要があり,面接開始前に面接室の準備は欠かせない。具体的には,空気の入れ替えや,季節によっては冷房や暖房を事前に入れること,学校の相談室などであれば椅子や机を整えたり,もし打合せなどで使用され若干散らかっていたとするのであれば簡単な整理整頓をしたりすることもある。また心の準備やケース情報の整理を行う必要もある。

また,多くのクライエントにとって,カウンセリングや心理療法は初めての体験である。秘密がきちんと守られるのか,どんな会話が展開されるのか,(カウンセリングなのだからそのようなことは決して無いだろうけれども)責められたり非難されたりしないだろうか,など不安を感じて来談されるクライエントも少なからずいらっしゃる。自己紹介の後,面接室に案内するまでの間,「相談室の場所はすぐおわかりになりましたか?」「今日はお暑い中大変でしたね」などと話しながら,面接室に向かう。

またこうした配慮は,初回面接中も,そして初回面接終了後,クライエントが相談室を後にするまで求められる。

2)主訴,成育歴,家族歴,家庭内−家庭外(学校や職場で)での様子・状況の確認

初回面接は「本日はどのようなことでこちらいらっしゃいましたか」といったこちらからの問いかけで始まる。「受付の担当者からある程度伺っておりますが,改めてお話いただけますか?」と添える場合もある。その問いかけに,クライエントは来談目的,主訴について語り始める。そして面接が進むにつれて,成育歴や家族歴,家庭内外での様子や状況などに話が及んでいく。

また,語りの内容だけではなく,語りの語られ方にも注目していく。堰を切ったように話される方もいれば,一言一言言葉を選びながら慎重に語られる方もいる。問題に押しつぶされそうになっているクライエントの方,問題を俯瞰的に見ながら話される方,どこか不自然に問題との距離をとりながら話される方,涙がこぼれそうになるのを必死にこらえながら話される方,さまざまな語られ方がある。面接におけるクライエントの語りの内容や語られ方から,クライエントが何にどのようにお困りなのか,クライエントが置かれている状況やそうした状況に関するクライエントの認識,想い,感情の理解に努める。

3)クライエントが面談に求めているものを尊重する──「問題焦点型ニーズ」と「情動焦点型ニーズ」

主訴の背後にクライエントの面接ニーズがある。クライエントは少なからず主訴で挙げられた事柄が解決に向かうことを面接に求めて来談する。こうしたニーズは,問題焦点型のニーズやコンサルテーション・ニーズとも呼べるかもしれない。他方,主訴となる問題によりクライエントが感じている不安,辛さ,しんどさをわかってほしい,そうしたしんどさを聴いてほしい,といったニーズがある。いわば,情動焦点型のニーズであり,いわゆるカウンセリング・ニーズといえる。とりわけ,日常生活で接する家族や友人,同僚などに打ち明けられない,あるいは,身近な他者に相談することが憚られるとクライエントが感じているような場合にはこの情動焦点型のニーズが中心となることが少なくない。クライエントは面接に二つのニーズを抱えて来談する。とりわけ二回目以降の面談への来談意欲を保つといった観点からも,主訴の背後にあるクライエントの面接に対するそれぞれのニーズの度合い,程度を把握し,ニーズに寄り添った面接を行うことも大切な視点ではないかと考えている。

4)「個(intra-personal)の見立て」と「関係性(inter-personal)の見立て」

初回面談を通じて,クライエント(やIP注1))がどのような方であるのか,個としてのクライエント(やIP)を理解していく。この際,クライエントの弱み(ウィークネス)のみならず,強み(ストレングス)やその方の内なるリソースについても把握することが大切であると考えている。またクライエントの「個の理解」を図ると同時に,クライエントやIPと周囲(①家族,②学校(担任,部活の顧問,養護教諭,その他),③職場(同僚,上司,部下),④その他(友人,その他))との関係性についても理解していく。

その上で,問題の背景にある,「個の要因」と「関係性の要因」の相互影響プロセスについてもそれぞれ見立てていく。とりわけ,「関係性の要因」の理解においては,いわゆる直線的な因果律に基づく理解のみにとどまらず,円環的な因果律に基づいたシステム論的理解も併せて行う。不登校の小学生が1日ずっと朝から深夜までゲームを行っているとき,個の特性(性格,障害,その他)からの理解を試みると同時に,個の問題行動と周囲の対応との循環のパターンにも着目する。例えば,「いつまでもゲームを止めようとしない子に対する親からの叱責や罵倒がますます子どもをゲームの世界に追い詰めている」といった悪循環のパターンが見出されることもあろうし,逆に「この子には何を言っても無駄だといった子どもに対する冷たい眼差し伴う諦めの思いが,言語,非言語のチャンネルを通じて子どもに伝わり,子どもがいつもでもゲームをし続ける状況を生み出し続けている」といった悪循環パターンが形成されている場合もある。

一方で,上記のようなゲームにまつわる問題であれば,両親の解決努力(attempted solution)のうち,問題解決に奏功している良循環のパターンにも着目する。例えば,子どもときちんと約束をして一定程度その約束を子どもが守っていたり,父親がきちんとペアレンタルコントロールを行っていたりすることもあろうし,何か他に夢中になれるものをということで野球やサッカーなどを習わせたりしていることもある。こうした悪循環や良循環のパターンについてクライエントが語る中で,「やっぱり私がガミガミ言い過ぎているのがいけなかったのかもしれないですね」「言い方をちょっと工夫しないとだめかもしれないですね」などの気づきにつながることもある。

注1)IP:Identified Patient:患者と見なされた人。
5)初回面接のおわりに──継続面談に対する意志の確認,その他

初回面接の時間もそろそろ終わりに近づくといったタイミングで,もし(2)で述べた面接へのニーズが,「問題焦点型ニーズ」であるようであれば,面接中に見出された悪循環や良循環のパターンから,今後の対応の方針についての示唆を伝える。また,クライエントによっては,「まずは一回相談してみよう」と思われて来談される方もいるし,申し込み時点から継続的に相談するとの考えで来談される方や,初回面接次第で継続するかどうかを決めようと思って来談される方もいる。こうした面接の継続についての意向についてお尋ねし,もし継続の意思があれば,次回の日時を決めて初回面接は終了となる。

6)初回面接を終えた後に

初回面接を終了後,面接をふりかえりつつ,面接前にイメージしていたクライエント像や事前に持っていた仮説との突合せを行う。自分が思い描いていたクライエント像通りのこともあれば,全く異なる場合もある。異なる場合には,イメージの修正と,それに伴い2回目以降の面接についてもイメージする。

3.おわりに

こうして文字にしてみると,当たり前のことを当たり前に行っているだけであることに改めて気づかされた一方で,必ずしもこれまでに述べてきたような流れに該当しない初回面接も次々と思い出され,結局のところ,「ケースに応じて臨機応変に初回面接を行っているのかも?」とも感じた次第である。

+ 記事

佐藤宏平(さとう・こうへい)
山形大学 地域教育文化学部地域教育文化学科
教育学博士
資格:臨床心理士,公認心理師
主な著訳書:『事例で学ぶ家族療法・短期療法・物語療法』(共著,金子書房),『学校臨床ヒント集』(共著,金剛出版),『社会構成主義のプラグマティズム』(共著,金子書房),『臨床心理学概論』(共著,サイエンス社),日本家族心理学会編『家族心理学ハンドブック』(共著,金子書房),フランクリンら編『解決志向ブリーフセラピーハンドブック』(共訳,金剛出版),ソバーン&セクストン著『家族心理学―理論・研究・実践』(共訳,遠見書房)ほか
趣味など:硬式テニス,バイク,音楽鑑賞,お酒

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