【特集 スクールカウンセリング30年】コラム#01 SCの役割を広げる|後藤沙苗

後藤沙苗(岩手県教育委員会)
シンリンラボ 第35号(2026年2月号)
Clinical Psychology Laboratory, No.35 (2026, Feb.) 

1.はじめに

2011年の東日本大震災で,わたしの生まれ故郷である岩手県沿岸部は甚大な被害を受けた。直後から被災地には県外から学校支援カウンセラーが派遣され緊急支援がなされ,その後は被災地に住み込み週5日の勤務の巡回型カウンセラー(現在はそれを踏襲するかたちで「エリア型カウンセラー」となっている)が導入され,こころのケアにあたってきた。東日本大震災当時,岩手県沿岸部居住のスクールカウンセラーは少なく,よって小学校へのスクールカウンセラー(以下,SCと略記)の配置は乏しかった。そのため,東日本大震災後に「はじめてSCと出会った」児童生徒や保護者,教職員は少なくなかったのである。

2.東日本大震災という学校危機

わたしは,東日本大震災の翌年から巡回型カウンセラー(現エリア型カウンセラー)として岩手県沿岸南部の学校を訪れている。津波の恐怖,死との直面,生活の立ち行かなさ。未曽有の震災がもたらした影響は大きく,学校現場は混乱をきたしており,強みだった地域コミュニティもそれ以前と同じようにはいかない様子であった。それまで家族や地域でなんとかやってきたことが,危機に陥りどうにもならなくなったタイミングでSCと出会ったのかもしれない。30年前もそうであったように,この時もまたSCを黒船来航的な扱いをする学校もあった。一方で,藁にも縋る思いでSCを頼る学校もあった。いずれにせよ,SCとして何をすべきか・しないべきか,自問自答する必要があるように思えた。

3.地方のスクールカウンセラー

地方でSCをしていると,狭い地域で,そして限られた人材で活動することから,さまざまな関係が密になりやすい。また,専門職が乏しく,医療や相談機関といった資源も限られることからSCが学校で頼られすぎているように感じることがある。東日本大震災後の支援でSCの存在が当たり前となり,他の支援も相まって相談の敷居は下がった。SCが認知され,相談しやすい立場になったことは喜ばしくあるが,あれもこれも話を聞いているとあっという間に勤務時間は過ぎてしまう。

4.学校危機から培った発達支持的生徒指導

岩手県では,東日本大震災後の取り組みの一つとして,「こころのサポート授業」がある。当初は,東日本大震災によるストレスや日常生活におけるストレスについて,児童生徒が自己分析(セルフチェック)を行い,対処行動を学ぶことでセルフケアの力を高めることを目的としており,現在も年1回行うものとなっている。SCが携わることができる「発達支持的生徒指導」,すなわち未然防止の取り組みである。担任らと児童生徒の実態を話し合ったり,それに見合った授業を模索したり,場合によってはSCが担任と一緒に授業を行ったりする。わたしは,この分野が専門でも得意でもなかったが,「生涯にわたる心の健康(メンタルヘルス)の保持」の観点からも,重要であると考えるようになった。

5.おわりに

SCは,個別の心理支援を行う専門家とのイメージが強いのではないか。わたしも学校に赴くと,「困難課題対応的生徒指導」(例えば,いじめや虐待を受けた児童生徒の面接)に追われることは少なくない。学校が喫緊で対応に苦慮していることが多く,それも大切なSCの仕事だと思っている。同時に,学校に求められたことをそのままSCが引き受けるのではなく,時には教員にコンサルテーションをしたり,時には外部の機関と連携したり,時には学級・学校・地域へのアプローチを考えたり,全体を俯瞰し,手立てを試行錯誤する必要がある。状況に応じてSCがコーディネートやマネジメントをすることは,学校でこどもを支援するために必要なSCの腕ではないか,もっと磨かねばと感じる今日この頃である。

文  献
  • 岩手県(2025)東日本大震災からの復興 岩手からの提言.
  • 文部科学省(2022)生徒指導提要.
  • 諸富祥彦 監修(2024)スクールカウンセラーのための主張と交渉のスキル.金子書房.
  • 杉山智風・小関俊祐(2025)小中高生をシームレスにつなぐストレスマネジメント教育プログラム.金子書房.
+ 記事

後藤沙苗(ごとう・さなえ) 
岩手県教育委員会 沿岸南部教育事務所 エリア型カウンセラー
資格:臨床心理士
趣味:家庭菜園,漬物作り

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